【インタビュー】『恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜』リャオ・ミンイー監督 "この映画に隠された、一風変わった撮影スタイル"
― 正方形のスクリーンサイズや、対称的な構図、色鮮やかな衣装やセットなど、随所に強いこだわりが感じられる本作ですが、こういったこだわりはリャオ・ミンイー監督によるものでしょうか?
リャオ監督 こういったこだわりは僕によるものです。たとえば、映画の中の色彩も全部僕が決めました。昔、ファインアートを学んでいたので、こういった美学にこだわりがあるんです。今回はiPhoneでの撮影だったので、カメラができる被写界深度やボケなどの表現を取り入れることはできません。そういった足りない部分を他の美学でカバーしようと思い、選んだ表現が色彩だったんです。
― リャオ・ミンイー監督が、本作で思い出深いシーンはどこですか?
リャオ監督 一番力を入れたのは、ニッキー・シエの泣くシーンです。彼女は泣くのが上手な女優ですが、あのシーンは単純に泣くのではなく、心が引き裂かれるような号泣が求められました。だけど彼女はその日調子があまり良くありませんでした。何度も撮りなおすことになり、彼女は何度も泣きました。最後に、僕がプライベートの話を彼女にして、その感情を引き出そうとしました。すでに彼女は7回ぐらい泣いていた状況でしたが、それでも最後にもう1テイク撮影しました。結果として、その最後のテイクが映画の中にあるシーンになりました。
― 本作には、ヤモリとハトが印象的に登場します。これらの動物は何かヒミツがあるのでしょうか?
リャオ監督 ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ヤモリは危機が迫ると生きるために尻尾を切り逃げる象徴として登場させました。また、ハトはジンを象徴しています。実はジンの髪の色はハトの首の色なんですよ。
― 主人公2人の潔癖ぶりは、まるでコロナ禍を生きる私たちを見ているようにも思えます。本作はコロナ禍以前、または以後に撮影されたのでしょうか?
リャオ監督 撮影はコロナ禍前に行われ、2019年6月にクランクアップしました。当時はまだコロナの感染は起きていないので、コロナとの関係はたまたまです。ただ、コロナ禍の中でこの映画のポスプロ(※)を行いました。劇中、テレビが映るシーンが2回出てきますが、画面に何を映すかは決めていませんでした。その後コロナの感染状況が酷くなり、この時代に起きたことを記録しようと思いました。それで、コロナ流行初期のニュース映像を探しました。その映像は、ウィルスの存在はわかったけど詳しいことは何もわかっていない時期のものです。噂は聞こえてくるけど、まだ何も知らない状況。映画で何かを記録することができるなら、何年後かにまた『恋の病』を見てこのニュースの映像を見たら、「この時に地球ではこういった災難があったね」と振り返ることができる、と。
※ポスプロ:編集や色調整など、撮影完了後に行う作業の総称。
― リャオ・ミンイー監督が『恋の病』を監督される際に、特に大切にしていたことは何ですか?
リャオ監督 カメラの安定性です。この映画には1つのルールがあるんです。基本的にカメラは動かない。人が動くとカメラは人と一緒に動く。人の動きが止まる瞬間、カメラの動きも止まる。この映画は控えめに一風変わった撮影スタイルを実行しているんです。観客にははっきりとは見えないかもしれませんが、うっすらと何かのスタイルを感じられると思います。この撮影スタイルも『恋の病』に隠された特殊な力です。
― 最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願い致します。
リャオ監督 僕が日本の観客に伝えたいことは、映画とはあまり関係ないのですが、台湾にワクチンをプレゼントしてくれてありがとうございます。よく台日友好と言いますが、友好とは、こういった大きな困難が訪れたときに互いに助けられることだと思います。これはとても善良な行動だと思います。映画を見るかどうかはお任せしますが(笑)、この機会に日本にありがとうを伝えたいです。
『恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜』
本日8月20日より! シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開中!
監督/脚本:リャオ・ミンイー
出演:リン・ボーホン、ニッキー・シエ
2020年/台湾/カラー/100分/ビスタサイズ/5.1ch
原題:怪胎 英題:i WEiRDO
配給:エスピーオー、フィルモット
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