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サスペンスが生まれる?! 中国式結婚の作法:後編|中国時代劇トリビア#67

前編はこちら

両家のお話しが整い、いよいよ婚礼当日。

男性側は赤布などで飾った輿を仕立て、新郎が新婦を家まで迎えに行きます(⑥「親迎」)。

  
「海棠が色付く頃に」で、花嫁の家に迎えの輿がやってくるシーン


この輿で花嫁を迎える風習は南宋の頃から続いているそうです。そして新婦は魔除けのため、蓋頭として赤い布を被って顔を見せないようにし、赤を基調とする服や靴を履き、婚礼の途中まで地面に足を付けません(「伝袋」という米が入った袋の上や、じゅうたんの上を歩く)。

花嫁が顔を隠す……というここに注目!花嫁がこの布を取るのは、新郎と新婚の部屋(洞房)に入ったときなので、ドラマではこの時に花嫁が本人と入れ替わっていたりして、外せないサスペンスポイントになりますよね!ちなみに、赤い布を取るときは、邪気を払うためになるべく高く放り投げるのが良いとされるそうです。

劇中では、新郎宅に到着した花嫁は、蓋頭をつけたまますぐに洞房に入れられ、ずーっと一人で新郎の訪れを待ちわびる…というイメージがありますが、実際の式での新郎新婦は意外とハードスケジュール!


「海棠が色付く頃に」より、洞房で新郎を待つ花嫁


まず、新婦は早朝にお迎えにきた輿に乗せられて家を発ちます。そして新郎の家に着いてかごを降りる時には、いくつかのセレモニー的な民俗儀式を行う必要がありました。

例えば、新婦は “火鉢跨ぎ ”というたきぎで燃やした火鉢を跨がされます。これは二人の今後の日々が火鉢の火のように活気に満ちた豊かなものであることを祈る意味があるそうです。そして中庭などに祭壇とした設けられた机に向かい、合図のもと二人で拝礼をし、家族や客人らの前で成婚が宣言されます。


「明蘭~才媛の春~」より結婚式のシーン


式に際して、新郎の家では新婦側から来た人々を上座として酒宴を設けるので、新郎新婦は双方の親類、知人の席を回って酒を注ぎ互いに紹介し合います。この酒宴というのもサスペンスポイントの一つ!

めでたい席のにぎやかさの裏で、花嫁の失踪、誘拐、新郎新婦の入れ替わり、刺客の容易な侵入などなど、事件が密やかに、時に大胆に起こっていきます。

何事もなく、無事に儀式や宴席が終了すると、新郎新婦は洞房に入ることになりますが、ここでも2人きりで夫婦としての儀式を行なう必要があり、赤い紐で結ばれた二つの杯でそれを取り換えながら酒を酌み交わしたり、子孫繁栄を願う餃子やうどんを食べたりします。

この日以降、約1週間程度の間に、墓参りや親族への挨拶まわり、酒宴の開催などがあり、それらが全て終わった時点でいわゆる“婚礼”が終了となります。
 
近年の中国の結婚式では、カジュアルなスタイルが好まれる一方で、民族衣装を着て、伝統的な儀式も行なうというカップルも増えているそうです。色々なお祝いのかたちがあって、楽しいですね!

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。

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