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【インタビュー】「悪との距離」リン・ジュンヤン監督 前編 "自分がやらなければいけない物語に出会ってしまった"

圧巻の金鐘奨6部門受賞、史上最多14ノミネート!台湾ドラマの歴史を変えた、いま見るべき傑作ヒューマンドラマ「悪との距離」。本作の演出を担当したリン・ジュンヤン監督に本作について話を訊いた。


― 「悪との距離」の演出を手掛けるまでの経緯を教えてください。

リン・ジュンヤン監督 「悪との距離」は脚本家・ルー・シーユエン(呂蒔媛)さんと台湾公共テレビ(PTS)が提携したドラマです。最初の脚本が完成した時点で、制作チームを公開募集していました。大慕影藝の林昱伶さんと湯昇榮さんが私に声をかけてくれて、三人で一緒に応募し、最終的にこのドラマの制作をさせて頂くことになりました。業界では無名な演出家として、お二人の人を見る目と人を使う勇気に感心しています。



― 最初に脚本を読んだときの印象を教えてください。

リン・ジュンヤン監督 2017年12月、初めて「悪との距離」の物語を読みました。当時は12ページの各話あらすじでした。長年この仕事をやっている経験から、脚本を読むときはこの脚本が映像化される可能性を理性的に分析してしまいます。現実か非現実か?このドラマのジャンルは何なのか?出演者にどう演じてもらうのか?展開は合理的なのか?テンポはいいのか?......そんな風に読むことが習慣になっていて、これらの問題が頭に自動的に出てきてしまい、脚本を読むことは楽しみではなくなっています。これはもう本能です。

ただ、この物語の最初の各話あらすじを読んだときに思わず感動し、共感して泣きそうになった瞬間、僕は自分がやらなければいけない物語に出会ってしまったと気が付きました。

― 「死刑制度」「無差別殺人」「精神病」などテーマを描いているので、慎重になったところも多いのではと思います。演出の際に、特に気を付けたことや意識したことがあれば教えてください。

リン・ジュンヤン監督 脚本家は本作の調査をきちんとやってくれているので、人物、シーン、議題などすべてが現実で、個人の臆測ではありません。こういった脚本に対して、演出の観点がとても大事です。僕が本作を演出する際の基本の原則は、キャラクター一人一人が持つ様々な顔をリアルに描き、彼らの葛藤と、その状況に置かれた「人間」の様子を見せることです。

また、このテーマは議論することができます。賛成する人と反対する人、どちらにもその理由があり、正誤の判断は難しいです。ですが、一般の人々がこのテーマに直面すると「人間がもつ複雑さ」を忘れがちです。人間の善と悪は、視点を変えると誰でも感嘆、共感させることかもしれません。


― キャスティングされる際に一番重視されたことはなんですか?また、キーマンである李大芝(リー・ダージー)役にチェン・ユーさんを抜擢された理由はなんでしょうか?

リン・ジュンヤン監督 期待度と新鮮感です。実は役をうまく演じてくれるいい出演者はいっぱいいますが、それが当たり前と思われ、逆に期待されなくなります。李大芝は、我々制作チームとキャストが脚本を読んだときに、一番難しいと思ったキャラクターです。チェン・ユーのイメージと演技で、一番私の印象に残ったのは、彼女の外見とオーラの特別さでした。それによって僕は彼女が演じる李大芝を想像したときに、新鮮感も期待感も感じました。

― 本作に出演した俳優で印象に残っている方はいらっしゃいますか?その理由も教えてください。

リン・ジュンヤン監督 俳優陣の中の誰かをあげることは難しいです。本作の俳優はみんなとても頑張ってくれましたし、一人一人が印象に残っています。


― どの俳優も素晴らしい演技を披露していますが、俳優とのやりとりの中で意識していたことはありますか?

リン・ジュンヤン監督 僕がとても大切に思っているのは、俳優のキャラクターとセリフに対する理解が僕と同じかどうかということです。俳優のほうが僕よりも深く認識している場合もあるかもしれません。役作りの過程ではとてもテクニカルな部分もありますが、誰にも言えない繊細な部分もあると思います。これらは演出と俳優との間のコミュニケーションと心の通じ合いが必要だと考えています。


後編 "人間としての性質に国境はない"

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