ヴィック・チョウ＆ディリラバ主演の話題作「如歌～百年の誓い～」で、ヴィック演じる銀雪は、絶世の美男子で、男性でありながら品花楼の人気NO.1を獲得する特別な存在でした。

男性なのに妓楼でNO.１...と、このあたりに何やら不思議な感じがしませんか？　今回は疑問に注目して、中国古来よりある（らしい）男にも女にも愛されちゃう時代劇にみるイケメンLOVE！なお話を調べていきます。

ちょっと皆さんに記憶をたどっていただくと、今回の銀雪に限らず、ドラマ「花と将軍～Oh My General～」でも、趙玉瑾がまさに"花花公子（プレイボーイ・遊び人の意味）"を体現するかのように、妓楼でド派手に舞って遊んで、周囲の人々を失神させるくらい魅了していましたね。

そして「蘭陵王」はその気品あふれる美しさで兵の士気を下げないように、仮面をつけていたのはご存じのとおり。

中国では美しき男性（少年）がかくも愛でられ、様々な恋物語が生まれてきたのです。

その中で「余桃の罪」「断袖」といったいわゆるBL的な逸話で知られる美青年が、弥子瑕（びしか）と董賢です。

弥子瑕は、衛国の君主霊公に寵愛された人物で、霊公に大切にされているときは、霊公の車に乗るという禁令を破っても罰せられることなく、食べかけの桃を霊公に献上しても、愛の深さゆえに逆に喜ばれましたが、弥子瑕の容色が衰えるに従って霊公の寵愛が薄れると、霊公から「かつて許可も得ず自分の車に乗り、食べかけの桃を食わせた不届きもの！」と、お咎めを受けることになります。この話しをもって、法家の韓非子が、君主の寵愛など気まぐれであてにならないものであり、物事を説くときは君主の自分への心の動きを察して説くべき、と処世の道を教えたそうです。

ここで使われる桃を分け合う"分桃"という言葉は、男色の意味を指すことになります。この言葉がドラマで登場するのは「皇帝と私の秘密～櫃中美人～」の中で、男装した飛鸞と李玉溪が出会う場面。「男同士で仲良くするなら、桃を食べるのがお似合いだ！」などとからかわれるくだりは、このお話がまくらになっているのですね！

そして董賢は、前漢哀帝の寵愛を受けた眉目秀麗な官人。

帝の寵愛を受けた結果、妹、そして妻（なんと妻帯者！テーマ通り、男にも女にも愛されちゃってます！）も入宮するなど特別待遇を受け、董賢一族は経済的、政治的な恩恵が与えられます。この董賢と袁帝のエピソードは、ある日、帝と董賢が一緒に昼寝をしていて、帝が先に目を覚ますのですが、自分の服の袖をまくらにして眠っている董賢を起こすのをためらった帝が、董賢が寝ている方の袖を切り落とさせたというお話し。これほど深く愛された董賢も、袁帝亡きあとは、権力を奪われ妻と共に命を絶ち、財産は没収、一族流刑という末路を迎えます。

この董賢の後任が、なんと新朝の皇帝となる王莽。王莽をイケメン俳優チェン・シャンが演じたこともありましたが、本物の王莽はイケメンではなかったようです。残念!!



Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』（キネマ旬報社）にて執筆記事掲載中。