桁はずれのスケールの大きさと美しく壮大な世界観で、日本の華流ドラマファンを魅了する中国ファンタジー時代劇は、アクションあり、ラブロマンスありと、確かにめちゃくちゃ面白い!! ……けれど、あまり聞き馴染みのない神様、そして妖怪風のキャラクターたちがどんどん登場してきて、ちょっっぴり「？？？」と思うことってないでしょうか？　今回はそんなファンタジードラマに関するお話をご紹介していきます。

３つの基本形とは？

中国人は現実的だと言われていますが、意外にも昔から不思議な話や妖怪話を好む傾向もあり、古典としては「西遊記」「封神演義」「聊斎志異」などが、たびたびドラマ、映画化され話題になります。一口にファンタジーといっても、その種類は分類しきれないジャンルのものも含まれていて、おおまかに分けるとするならば、下記のの3つの基本型に分けることができます。

①武侠もの（ファンタジー要素を全く含まない作品もあり）
②神仙もの
③怪談（幽霊もの、狐もの、妖怪ものなど）

基本形のコンビネーションもある！

最近の作品だと、「花千骨～舞い散る運命、永遠の誓い～」は＜①武侠もの＋②神仙もの＞タイプで、これは武侠に道教（神仙思想）の背景を合わせた「仙侠もの」といわれます。ゲーム原作や近年の人気小説をベースにした作品は、前述の基本型①～③にワイヤーアクション＋ラブストーリー（悲恋、または禁断の愛）＋CG大変身！ といったオリジナリティあふれる演出がプラスされていきます。

"仙侠もの"「花千骨～舞い散る運命、永遠の誓い～」より
©CIWEN（SHANGHAI）MEDIA LIMITED

ファンタジードラマでよく聞く「六界」とは？

ファンタジードラマでよく聞く「六界」。ここでいう世界には「神界（天界）」「仙界」「魔界」「妖界」「冥（鬼）界」「人界」の6つのカテゴリーがあり、各界に属するものは「○○族」と呼ばれたりします。

「神界」と「魔界」 は対立するものとして存在。妖界の妖族はネットゲームのキャラとしても人気で、ここにいるのは古代神盤古から生まれた自然や動植物などが妖精となったりしたもの。冥（鬼）界にいるオニは、日本人のイメージするあの鬼ではなく、幽霊・亡霊のことです。そして仙界は仙境であり、修行を経た仙人たちがいます。

「花千骨～舞い散る運命、永遠の誓い～」より
©CIWEN（SHANGHAI）MEDIA LIMITED

曖昧な「神」と「妖」の区別

中国の物語の中では「神」と「妖（怪）」の区別がとても曖昧です。

西欧では、まれに神に反逆した天使が堕天使となる場合もありますが、神と悪魔の立場が変わることはあまりないですよね!?

でも中国の物語だと、たとえば「西遊記」で猪八戒は天蓬元帥という神様だったのが、罪を受けて天から落とされ妖怪になってしまいます。その逆、孫悟空は妖怪だったのに、道教におけるキングオブ神様・玉皇大帝から官位を授けられると、斉天大聖という神様になってしまいます。

「本当は神様だけど、たまに妖怪やってま～す！」などという形態も、中国の物語においては許されてしまうわけです。（そういえば本当は別界層なのに、お忍びで人界にきて副業をする...「永遠の桃花～三生三世～」でも司音が屋台で易者をやってましたね!?）。

「永遠の桃花～三生三世～」より司音（ヤン・ミー扮）
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参考文献「中国妖怪伝」の記述を引けば、人間には持ちえないスーパーパワーの持ち主が、「正」という地位にあれば、「神」とみなされ、「邪」に位置するならば、それは「妖（怪）」とみなされる……となります。そして中国における神とは、もとは人間である仙人たちが修行を積んで神になるという意味合いが強いので、絶対的崇高な存在というとらえ方よりも時として人間に近い存在として描かれるのだといえるのかもしれません。

「中国ファンタジー時代劇」ってなんだ!? 後編｜中国時代劇トリビア＃３

後編では、ファンタジー時代劇の中でも、よく登場する神系＆妖キャラたちをピックアップ！

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Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』（キネマ旬報社）にて執筆記事掲載中。