連載
#1【韓流お仕事図鑑】あなたのもとに韓国ドラマが届くまで<TSUTAYA マーケティング担当編>
普段私たちが見ている韓国ドラマ。韓国で制作されたドラマがどういう道のりを経て、日本でテレビ放送されたりDVDになったりするかご存知ですか?
この連載は、韓国ドラマを日本のお茶の間に届ける過程に携わる人たちにインタビューをしていく【韓流お仕事図鑑】です。
連載第7回目は、誰でも1度は利用されたことがあるのではないでしょうか?TSUTAYAに迫ります。TSUTAYAに置かれるアジア作品の仕入れをはじめ、アジア作品を盛り上げるために様々な業務を担当されている株式会社TSUTAYAの落合麻葉さんのインタビューをお届けいたします。
<プロフィール>
落合麻葉さん(株式会社TSUTAYA)
TSUTAYAアジアジャンル(映像)のマーケティング担当。といっても仕事は多岐にわたる。
第1回 「1人で全部担当している」:2018.1.29更新
第2回 「スターをたくさんつくること」 :2018.1.30更新
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― ご自身の仕事内容について簡単に教えてください。
主な業務はTSUTAYAに仕入れるアジアジャンルのレンタルDVDの本数決め。あと、店舗で商品を展開するにはポップ等が必要になるので、そのポップの制作。アジアMAGAZINEやLove アジアbookなど販促物の制作、あとは<全巻レンタルキャンペーン>のような、借りていただくためのキャンペーンの企画、ドラマ出演キャスト登壇イベントの企画などです。
それ以外に、グループ会社がドラマの買い付けもしているので、その試算もしています。「このドラマを買い付けたいんだけど、TSUTAYAとしてはどのくらい入れるか」みたいな、そういう試算ですね。
海外のマーケットにも、新しいドラマの情報を聞きに、TSUTAYAの立場として行ったりしています。
新作情報や、俳優インタビューなどが掲載されている。
― そんなにたくさんの業務が...、かなりお忙しそうですね...。
そうですね。
あと、主な業務ではないんですけど、K-POPにまつわる情報、たとえば「今どのグループが人気か」とか、そういう情報提供やアドバイスを他の部署にしたりもしています。あとはドラマだけでなく映画もありますし。韓国、アジアものにまつわることは、いろいろやっていますね。
― それらのアジアジャンルに関するお仕事は、何名ぐらいで担当されているんですか?
1人です。
MDチームっていうマーケティングのチームにいるんですけど、各ジャンルに一人担当が付いているんです。
洋画に1人、邦画に1人、アニメに1人、海外ドラマに1人、アダルトに1人、アジアTVドラマに1人。
その計6人で、TSUTAYAの仕入れは全部やっているんです。
― えぇ!そんなに少ない人数で!
そうなんです。冗談抜きに「事故にあわないようにしようね」っていつも言いあっています。
倒れちゃったりしても、誰も代われないので。
アシスタントもいないので、プレゼントキャンペーンの発送管理とか、そういう細かい作業も全部自分たちでやらなきゃいけないんですよ...。
あとは、"アジア MAGAZINE"や"Love アジアbook"って、お店の売り上げによって入れる冊数を変えているので、その管理も。
ただ、発注に関しては、全体で1万本、とかそういう数を決めて過去の実績から、個々の店舗の本数は出るようにはなっていて。その後の最終調整は、全国の各地域に担当がいるので彼らが考えてくれています。
― あまりにお仕事が多岐にわたっているので、落合さん率いるチームで担当されているのかと思ってました...。
違います...。
すべての決定権を握っているので、メーカーさんたちにはとても優しくしていただいています(笑)。
その分、責任も伴うので売上管理はかなりシビアなんですが。
― お一人で担当されているっていうことは、相当な知識が必要ですよね。
ジャンル担当は6人ともそれぞれ相当持っていると思います。
メーカーさんは自分の会社が権利を持っている作品をアピールしていけば良いと思うんですけど、私たちは全メーカーさんの全作品を見なければなりません。
どんなに良い作品だと思っても、お店の棚には限界があるので、全部が全部1万本仕入れるということは出来ないんですよね。「この作品は1万本だけど、この作品は1000本で」っていう判断をしていかないと、そもそもお店に入りきらないんです。
月の売上の中で、棚に収まり、いかに効率良く本数を入れ、お店が売上を上げられるかを考えて、仕入れ本数を決めています。
― お店に仕入れる本数は、どういう基準で決められているんですか?
基準はもちろんあります。
過去2~3年の間での類似作を見つけて、その実績から決める、という感じでしょうか。
― 類似作っていうのは、どこを類似のポイントとしているんですか?
キャストや原作のあり・なし、あとは脚本家ですね。アジアドラマでは、監督よりも脚本家を重視しています。
アジアはキャストの影響がかなり大きいですね。邦画もそうですけど、好きな俳優に紐付いて作品をご覧になっている方が本当に多いです。
でも、人気俳優の秀逸な作品があったとしても、ハードなアクションものや、サスペンスものはあまり受けがよくなかったりするんですけど。
あとは、時代劇と現代劇も違いますね。
時代劇ってやっぱり若い世代はあんまり見ないんですよね。時代劇の中でも"THE時代劇"っていう作品と、ちょっとキラキラした時代劇があるんですけど、"THE時代劇"のときは、見る世代がより上がるので、そういう作品を類似作として持ってこないと、数字が合わなくなっちゃうんです。
逆にキラキラ時代劇の時は、キラキラ時代劇だけを集めて、実績を見ていきます。
類似作を見つけるにしても、作品を全部見ていないと決められないし。メーカーさんに対して、この本数に決めた理由も説明が出来ないんですよ。そこが一番肝かな、とは思いますね。
― 毎月どれくらいの本数をご覧になっているんですか?
数えられないですね...。
早く見なければいけないことも多いので、日本に入ってきて最速で放送するCSチャンネルは結構契約しています。
本当に急いでいるときは字幕なしで見たりもしますね。
韓国語は結構勉強したんです。
そもそも私は東方神起が好きだったんですけど、韓国で放送されているバラエティの動画を見ていたときに、何を言っているかがわからなかったんです。言っていることを聞きたい、知りたい、と思って勉強し始めました。「宮~Love in Palace」の台本BOOKでも勉強しましたよ。聞くだけなら7~8割わかるようになりました。
韓国出張のときに、最初の頃は社内の人間が通訳してくれていたんですけど、今は全くしてくれません(笑)。
― そもそも、現在のお仕事に就いたきっかけは何だったんですか?
入社当時は人事部でした。TSUTAYAって若いときは、一つの部署半年~1年ぐらいで、とにかくいろんな部署を経験させるんです。それで、しばらくすると、一つの部署に2~3年いるようになっていくかんじで。
私も店舗にいたこともあるし、人事部や社長秘書のようなことをやっていたときもあるし、TSUTAYA DISCASの立ち上げのときは、システムを担当していた時期もありました。
― じゃあ、最初からアジア作品をやる為に入社されたわけではなく、TSUTAYAに入社されたんですね。
そうですね。
そもそも学生のときにTSUTAYAでアルバイトしていたんです。その時に店長に勧められて、軽い気持ちで受けてみたかんじでした。
― アジア作品を担当するようになってどれくらい経つんですか?
6~7年ぐらいですね。
― そのきっかけは何だったんですか?
やりたい、ってアピールしました。
MDの前はメーカー営業を担当していたんです。
MDが決めた各作品の仕入れ本数の数字を持って、実際にメーカーさんに話しに行く仕事ですね。その仕事を2~3年やっていました。
その時にはもうアジアにどっぷりハマっていて、周りにそんなに東方神起を好きな人がいなかったので、一人で中国に行ったり、タイに行ったりして公演をみていました(笑)。初めて行く国でしたけど。今思うとあの行動力って^^;
― アジアにのめり込んだきっかけは、やはり東方神起が大きいんですね。
そうですね。
まだ日本にK-POPのグループがどんどん来日しているような状況ではなかったですし。
ドラマのOSTを歌っている方、あとは"神話"や、"SS501"とか、"BIGBANG"とかそんなくらいでした。
というか、そのくらいしか当時は知りませんでした。
東方神起の前は、『シュリ』とか『猟奇的な彼女』とか、日本で韓国映画ブームがちょっとあった時に、韓国映画にハマったりしました。更にその前は、ウォン・カーウァイとかの香港映画が好きではあったんですけど。
『シュリ』は弊社のグループ会社で出資をしていたんですよね。
当時、私はメーカー営業をしていたのですが、初めて韓国映画に触れて衝撃を受けて。
これはしっかりやって、全国の方に見て頂かないといけない作品だな、と思って、まず、社内に猛プッシュしました。懐かしい・・・。
だから最初はドラマを一生懸命見ていたわけではなかったんです。「宮~」もそうですけど、語学を勉強するために見始めたので、俳優さんもその頃は全然知りませんでした。
ただ元々、当時のMD担当から「どれくらい入れたらいいかな」とか相談を受けていたりはしたので、その流れもありましたね。
― では、落合さんにとって、このお仕事のやりがいはなんですか?
おこがましいけど、ちょっとブームを作ってるぞ、と感じられるときは嬉しいですね。
ここ最近、売上が悪いわけではなかったですがブームを作れていませんでした。
そんな中、2017年の2月に「太陽の末裔 Love Under The Sun」がリリースされたんですけど、この作品は絶対に売れるから、TSUTAYAを上げてプッシュしていきたい、って1年ぐらい前からずっと言っていたんです。でも2016年が厳しい年だったから、誰も本気にしてくれなくて、一人で熱くなっていました。
それでも上司に「絶対にくるから、やらなきゃダメなんです!」ってアピールしまくって、キャンペーンもたくさん企画して、他の作品を押しのけてまでイチオシにしたんです。
そうしたら、見事に当たったので、「ほらね!!」ってかんじでした(笑)。
― それは嬉しいですね!
ちょっと怖いところはありましたけどね。アクションも多かったので、心配要素が結構あって...。
でも自分を信じて推し続けて、結果的に当たったので、お店にも感謝されましたよ。
― そこまで「イケる!」って思ったポイントは何だったんですか?
そもそも韓国でヒットしていたっていうのはありますけど、でも正直韓国の視聴率ってあんまり関係ないんですよね。向こうで全然流行らなかった作品が日本で流行ったりもしますし。
やっぱり脚本家が良かったっていうのと、日本人が好きな顔の俳優っていうことですかね。ソン・ジュンギの復帰作だった、っていうのも大きいです。
軍人の制服とかはあんまり出さないようにして、ラブ?みたいなかんじのキラキラしたかんじで推していくことを意識しました。メーカーさんから頂く写真素材も「軍人の制服以外にしてください」って言ったりして...。軍人の話だからだいたい制服か裸なのに(笑)。
― あははは! そういう部分もメーカーさんと一緒になって考えていくんですね。
メーカーさんにはご迷惑をかけてしまうことも多いのですが、私は「こういう写真素材が欲しい」とかお願いしちゃいます。やっぱり、お客様の目に留まるもののほうがいいですし。
ときには、作品のキービジュアルを制作される段階からメーカーさんに相談されたりもしますよ。
― そう考えると...落合さんはアジアドラマ業界をかなり牛耳ってる感が...(笑)。
げ・・。そう見えますか・・そんなことないんですけどね。。
威張ってるわけじゃなくて、聞かれるから答えてるだけなんですけど...。
― それは信頼されてるってことですよ!
お話をお伺いしていると、TSUTAYAに利益が出ることもそうですが、それと同時に、アジアドラマというジャンルを盛り上げることに尽力されている印象を強く感じます。
それはありますね。
もちろんTSUTAYAの売上を上げることが一番なんですけど、自分が関わっているものは責任を持ってやりたい、というか。
アジアジャンルというものを私自身がすごく好きなので、それに責任を持ちたいというか。
すごく大きなことを言うと、またブームを起こせるかもってどこかで信じているのかもしれないし、そういうコンテンツもまだまだあると思っています。
アジアジャンルは、なかなか世の中に出て行きづらいといいますか、プロモーションが他ジャンルのように出来ないのが本当に歯がゆいです。コンテンツのクオリティを信じているので。その良さを知ってもらうためにやっている、みたいなところもあります。
― やっぱりお話しを聞いていると根底にアジアジャンルへの深い愛を感じます。
そうですね、やっぱり好きなんだと思います。好きだからこそツライときもあるんですけどね。
<第2回へ続きます>
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