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【きゅんとあじあ】 ちちぶ映画祭2015 『KANO』 舞台挨拶 (動画あり)

■かつて映画は日常だった-文化が身近にあることの大切さを示す映画祭
11/14(土)、ちちぶ映画祭のオープニングセレモニーが開催され、オープニング作品『KANO 1931海の向こうの甲子園』の舞台挨拶が行われました。

当日は生憎の小雨。でもしっとりと濡れた紅葉がまた風情があって、台湾からのお客様にとっても、これはこれで、最も美しい時期の日本の風景をご覧いただけたのではないかと思いました。

台湾からのお客様...
そう、この舞台挨拶に、主演の永瀬正敏さんのみならず、ウェイ・ダーション プロデューサーとマー・ジーシアン監督が駆けつけてくれたのです!

オープニングセレモニーでは、主催である西武鉄道株式会社 取締役会長、後藤高志氏、秩父副市長の持田末広氏に続き、秩父市観光大使であり、上映作品『もういちど』で映画初主演を果たした落語家の林家たい平さんがご挨拶されました。


「映画祭というと、別の国で行われているような気持でしたが、秩父で映画祭が開かれたこと、感謝しております。私が子供の頃には、昭和館、革進館、国際劇場と、この小さな町に3つの映画館がありました。映画は日常でした。文化が身近にあることを常に感じながら、過ごしていました。それがいつの間にかひとつ消え、ふたつ消え...映画館がなくなった中、文化が近くにあることの大切さを改めて感じた、そんな時に様々な方のお力により、ちちぶ映画祭が開催されることになりました。東京から1時間23分。西武鉄道の努力により、8分間、短縮されました(笑) 故郷に帰ったような気持ちになれる秩父に是非お越しください!」
よどみないご挨拶に聴き入りながら、とても素敵な方だなぁと思いました。


■たったひとつの映画が強固にした、ふたつの地域の絆

そしていよいよ、"チームKANO"の登場です!
ウェイ・ダーション プロデューサー、マー・ジーシアン監督、主演の永瀬正敏さんがステージに登場すると、満場の客席で一斉にKANOの赤いフラッグが振られました。
ウェイさんの、静かで説得力のある語り口。俳優出身のマー監督のファンへの心遣いと気負いのない笑顔。そしてそのふたりを、しみじみと見つめる永瀬さん。
楽しくて、終わってしまうのが惜しいような、そしてものすごく貴重な時間を共有しているような気持になりました。それは永瀬さんが言うように、「これが最後の機会」になるかもしれないと、感じていたからかもしれません。おそらくファンの皆さんも、そんな気持ちで集まっていたのではないでしょうか?

でもこれは終わりではありません。
『KANO』という作品が届けてくれたメッセージは、辛い時にこそむくむくと心の中に甦り、私たちを鼓舞してくれるはずです。
そしてウェイさん、マー監督、永瀬さん、選手たちやスタッフの方々の縁は続きます。
それだけではなく、台湾に魅了された私たちは彼の地を訪れ、台湾の人々もまた、今まで以上に日本を想ってくれることでしょう。
一本の映画が繋いでくれた絆は、これからも強く太く長くなっていくはずです。
これほどの求心力がある映画が、これほど観客に愛された映画が、かつてあったでしょうか?
こんな時代だからこそ、『KANO』という素晴らしい作品を届けてくれた皆様に、改めて感謝したいと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、舞台挨拶の模様を動画と文字でお届けします!

動画は次ページへ



■舞台挨拶の模様




(映像約13分)



ちなみに...今だから明かしますが、『KANO』には、台湾に渡ったシネマート六本木の元スタッフも出演しているのです! 甲子園の決勝戦のシーン。実況席で音声役としてバッチリ映るので、注目してください。(未見ですが、彼はある短編映画にも出演しています。あの監督さんとお仕事したなんて羨ましい...)








★『KANO』 舞台挨拶 採録
■まずはご挨拶

(写真:ウェイ・ダーション プロデューサー)

ウェイ・ダーション:
毎回、日本に来ると嬉しくなります。今回も例外ではありません。
この機会をいただき、ありがとうございます。

マー・ジーシアン:
はじめまして、私はマーです。どうぞよろしくお願いします(日本語)。
私も、ウェイさんと同じく毎回日本に来るのが嬉しいです。
我々の映画をご覧いただけること、感謝しております。
とても緊張しています。KANOの学校の旗を持っている人はいませんか?
地元の方はもちろんですが、東京から駆けつけてくれたファンもいますね。
東京でプロモーションしたときに顔を覚えてしまいました。何名か見かけましたので、この場を借りて感謝いたします。

永瀬正敏:
こんにちは、永瀬です。
第3回ちちぶ映画祭、開催おめでとうございます。
とても今日は嬉しくて...色々な嬉しいことがいっぱいあるのですが、まず、ちちぶ映画祭で、僕たちが一生懸命作った映画を上映してもらえること、そして何と言っても台湾からウェイさん、マーさんを呼んでくれたこと、僕はとても嬉しいです。ありがとうございます。
(久しぶりの再会か聞かれ)日本で会うのは久しぶりです。


■秩父の印象は?

(写真:マー・ジーシアン 監督)

ウェイ:
とても特別ですね。秩父は初めてですが、特別な街だと思いました。
昨日着いてから観光したのですが、秩父の皆さんの観光への取り組みに感動しました。
この街を全世界に向かってPRする姿に感動しました。
台湾も、秩父の皆さんと同じようにこのような努力ができれば、もっと良くなるのではないかと思います。

マー:
小さい時に山の上で育ったので、秩父は山に囲まれていて故郷に帰ってきたような気持ちです。
美しい山々や渓谷、自分の家に帰ってきたような気持ちで、人々もとても親切で、楽しませていただきました。
先ほど旅館から会場に来るとき、道端に鹿がいるのをみて感動しました。
私は台湾の原住民なので動物が大好きで、とても興奮しました。
台湾に帰ったら友人に秩父に行くよう呼び掛けたいと思います。
皆さんも是非、私の故郷、台湾にいらしてください。

永瀬:
正直...秩父に着いてすぐお蕎麦をご馳走になり、食べたかと思ったらすぐここに着き、今ここにいます(笑)
まだゆっくり観光できていないのですが、来年も是非呼んでいただいて、前倒しで一週間くらい泊まって、堪能したいと思います。

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■金馬奨で6部門ノミネートされ、観客賞を受賞しましたが、その感想は?

(写真:永瀬正敏さん)

ウェイ:
嬉しいです。
私たちが映画を撮る目的は観客の皆さんに観てもらうことです。
決して受賞するかどうかではありません。
毎回、映画祭や授賞式に参加しますが、観客の皆さんの映画への期待に
きちんと答えを出せるように努力したいと思います。

マー:
観客賞は金馬奨だけでなく、台北映画祭、大阪アジアン映画祭でも同じ賞をいただいきました。
これは創作者にとっての醍醐味です。嬉しいです。
映画製作を通して自分自身への理解を深めることができます。
映画を通して、観客の皆さんへの前向きなメッセージ、諦めない気持ちを伝えられたらと思っています。
金馬奨では残念なことがあります。
永瀬さんが外国人としては初めて主演男優賞にノミネートされました。
でも...残念!(日本語)
あとで記者に聞いたら、なんと1票差で敗れたということでした。
一緒に引き続き頑張りましょう。

永瀬:
一票差ですか...

マー:
でも、2位だから『KANO』と一緒ですよ。

永瀬:
映画は作っただけでは完成しない。観客の方に観てもらって初めて映画が完成して、そこからまた新たな物語が始まるものだと思うので、観客の方にいただいた賞はとても嬉しかったです。
ウェイさんとマーさんが作られた『KANO』を通して、台湾から甲子園に来る方が10倍?50倍?100倍?...その辺忘れましたが(笑)、増えたらしいんですよ。
とにかくたくさんの方が来てくれたらしいので、是非秩父でも映画を撮っていただけると、台湾からのお客さんが100倍、1000倍、10000倍の方がいらっしゃるんじゃないでしょうか?


■この映画は全力野球ですが、ユニフォームがまっ黒だったり、大変ですよね



永瀬:
あんなに衣裳部屋に衣装が並んでいる現場を初めてみました。
たとえば練習のシーンでも、きれいなユニフォーム、ちょっとよごれたユニフォーム、もっとよごれたユニフォーム、どろどろに汚れたユニフォーム、4パターンくらいあって、着替えながらやるんですよね。どれくらい洗濯代がかかったのか...(笑)


■スタッフ、キャストの皆さんのチームワークはいかがでしたか?



ウェイ:
映画製作を初めてから同じチームでやっていて、この作品が3作目になります。
チームのメンバーとはある種の暗黙の了解があり、また製作のスタンスに関しては共通の認識があると思っているので、特に問題はありません。
今回一番の幸運は、永瀬さんが我々のチームに加わってくれたことだと思います。
製作側が努力していても、プロの役者がいないと困ります。
プロの役者がいるからこそ、製作した映画を別のレベルに持っていくことが出来るのです。
永瀬さんありがとうございます。


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■ここは絶対に忘れられない、というところはありますか?



マー:えー

永瀬:
(マー監督が考えている間に)全部だと思いますね。

マー:
映画撮影は大変です。台湾の製作環境は決して良くはありません。
でもチーム一丸となって、ひとつのことを成し遂げようとしている、その努力には感動しています。
印象深いのは、とにかく永瀬さんはいつも運が悪いなと...
この映画は雨のシーンが多くて、外で撮るので非常に寒いんですよね。
永瀬さんは雨のシーンが多かったので、本当に運が悪いなと思いました(笑)


■最後にメッセージをお願いします。



ウェイ:
とにかく楽しんでいただいて、満足してもらえたらと思います。
最後にお願いですが、もし気に入ってくれたら、是非DVDを買ってください!

マー:
昨日、秩父には映画館がないと聞いてびっくりしました。
西武鉄道、秩父市役所の皆様に感謝したいと思います。
我々の映画を秩父で上映していただきありがとうございます。
これは台湾と日本の共同の物語です。思い出もこのふたつの地域の共通のものです。
是非楽しんでください。

永瀬:
もう、ここにお立ちになっているおふたりに感謝しかありません。
この映画のお話をいただくまで、この史実があったことを知りませんでした。
僕らの先輩にこんな素晴らしい方がいることも知りませんでした。
それを教えてくれたのがこのふたりで、台湾で映画を作っていただいて、日本でも公開できた。
このおふたりに感謝しています。
『KANO』で3人がこのように揃うのは最後になってしまうかもしれません。
個別にはずっとずっと、永遠の友人だと思っていますが...
この機会を作ってくれた、ちちぶ映画祭の方々にとても感謝しています。
僕の大切な子供(選手)たち...野球の上手い子を何人も知っているんですよね。
西武グループさん、ライオンズさん、何名か、いかがでしょうか?


その後、客先をバックにしての写真撮影が行われ、舞台挨拶は終了しました。(文:村野奈穂美)



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