3月23日(木)までの[boidsound]上映
バニシング・ポイント≪4Kデジタルリマスター版≫【boidsound上映】
遂にこのときが来てしまいました。直線、スピード、ガソリン、蛇とロックと砂漠・・・ 。
史上最もアメリカらしいアメリカ映画であり、あらゆる現実を超越したアメリカン・ニューシネマの雄篇『バニシング・ポイント』が2023年3月3日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて、4Kデジタルリマスターで約50年ぶりの爆走再公開となります(全国順次公開)
ベトナム戦争渦中のアメリカの衝撃的実態を映し出して60年代に終わりを告げた『イージー★ライダー』(69)から2年、すでにこの国は終わっているという諦念をもって70年代という新しい時代を切り開いた映画『バニシング・ポイント』(71)。60年代末から70年代半ばにかけ、アメリカ映画界を根底から揺るがした<アメリカン・ニューシネマ>を代表する⼀作だ。コロラド州デンバーからサンフランシスコまでの2,000キロを不眠不休、15時間で⾛り切るという、スピードにすべてを賭けた男、コワルスキーの姿を、体制も反体制も超越した、乾ききった精神性で鮮烈に描く。既存の体制や⽂化への反抗や、現実に敗北する主⼈公の姿を描いた多くのニューシネマとは⼀線を画し、何も求めない主⼈公の虚無感が全篇を貫いている。そして、壮絶なカー・チェイスと⾼鳴るロックのなか、コワルスキーの不条理なまでの逃⾛劇は、観る者をかつて辿り着いたことのない次元にまで導いていく。
本国アメリカでは『フレンチ・コネクション』(71)や『ダーティ・メリー、クレイジー・ラリー』(74)とのカップリング興⾏で⼤ヒット、⽇本では有楽町スバル座で17週にわたるロングラン、キネマ旬報ベスト・テンでも第5位という⾼評価を獲得。以降も世界中に熱狂的な⽀持者を⽣み出し、スティーヴン・スピルバーグ監督がフェイバリットであることを公⾔したほか、クエンティン・タランティーノ監督は⾃作『デス・プルーフ』(07)でオマージュを捧げた。⾳楽界においてもアメリカのバンド、ガンズ・アンド・ローゼズは歌詞に本作の台詞を引⽤、97年にはスコットランドのバンド、プライマル・スクリームが映画と同名のアルバム「バニシング・ポイント」を発表。「コワルスキー」と題された楽曲のほか映画の世界観をアルバム全編に反映するなど、ミュージシャンたちにも絶⼤な影響⼒を発揮している。『バニシング・ポイント』は、アメリカ映画史において傑作、名作とされる作品とは次元の異なる場所に存在し、⼈々の⼼に残り続ける孤⾼の作品であり、今回は4Kデジタルリマスターを施した約50年ぶりのリバイバル公開となる。
監督は、『荒野に⽣きる』(71)、『ロリ・マドンナ戦争』(73)など、アメリカの辺境地を舞台にした異⾊作を放ったNY出⾝の⻤才リチャード・C・サラフィアン。主演のコワルスキー役に当時無名のバリー・ニューマン、そしてコワルスキーとラジオを通じて交感する盲⽬のDJスーパー・ソウル役に『ブレージング・サドル』(74)のクリーヴォン・リトルが扮している。作品のもうひとつの主役ともいえる劇中⾞はクライスラー社の70年型ダッジ・チャレンジャーR/T。『ブリット』(68)でスティーヴ・マックィーンが駆ったマスタングのモディファイを⼿掛けたマックス・バルチョウスキーのメンテナンスのもと、当時ハリウッド最⾼のカー・スタントマン、キャリー・ロフティンとビル・ヒックマンがハンドルを握っている。
初公開当時、正体不明だった脚本のギレルモ・ケインの名は、現在ではキューバ出⾝の作家、評論家として欧⽶で名⾼いギリェルモ・カブレラ=インファンテ(1929〜2005)のペンネームだったことが明らかになっている。ラテン・アメリカ⽂学特有の<魔術的リアリズム>を脚本に取り⼊れ、オープニングとエンディングが「メビウスの輪」のように繋がっている構成、魂の円環を描いたこの作品の主題に改めて⽬を向ければ、<カー・アクション映画の頂点><史上最⾼のロードムービー><カウンターカルチャー映画の重要作>と謳われてきたこの作品が、それだけでは済ますことのできない画期的な作品だったことがわかるだろう。この約半世紀ぶりのスクリーンへの帰還は、『バニシング・ポイント』に新たな解釈と新たな評価をもたらす千載⼀遇の機会となるはずだ。
●ものがたり
ベトナム戦争で名誉勲章、元バイクレーサー、元ストックカーレースドライバー、警官を懲戒免職処分となり、いまは⾞の陸送を⽣業にするコワルスキー(バリー・ニューマン)は、デンバーから1200マイル離れた⻄海岸サンフランシスコまで、⽩の70年型ダッジ・チャレンジャーを15時間で届ける賭けをした。交通法規を無視して爆⾛するコワルスキーを追って各州警察が追跡を続ける中、警察無線を傍受した盲⽬の⿊⼈DJスーパー・ソウル(クリーヴォン・リトル)がその様⼦をラジオで実況中継を開始。死の恐怖もいとわず、憑かれたようにハンドルを握るコワルスキーは、⼤勢の野次⾺やメディアが押し寄せる中、ブルドーザー2台によって道路封鎖されたバニシング・ポイント<消失点>に向かい、アクセルを踏み込んでいく・・・
boid主宰・樋口氏が作品と劇場の個性を念頭に音響を調整。
ライブ用アンプやスピーカーを用いる「爆音上映」とは異なり、劇場の既存システムのみで映画鑑賞体験を拡げる試み。
※当館は2Kプロジェクターでの上映
監督
リチャード・C・サラフィアン
キャスト
バリー・ニューマン、クリーヴォン・リトル、ディーン・ジャガー、ヴィクトリア・メドリン、ポール・コスロ、ギルダ・テクスター、デラニー&ボニー&フレンズ、アンソニー・ジェイムス、セヴァーン・ダーデン、ジョン・エイモス
スタッフ
製作:ノーマン・スペンサー 原案:マルコム・ハート 脚本:ギレルモ・ケイン(ギリェルモ・カブレラ=インファンテ) 撮影:ジョン・A・アロンゾ テーマ曲「バニシング・ポイント」“Nobody Knows”byキム&デイヴ 編集:ステファン・アルンステン スタント・コーディネーター:キャリー・ロフティン、ルー・イライアス