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10月18日(金)よりロードショー

ECM レコード サウンズ&サイレンス

美しいい世界の風景と共に、紡がれるサウンドの数々

音楽に全ての情熱を捧げる男マンフレート・アイヒャーのロード・ムービー

ドイツのECM レコード創立者であり、現代音楽を代表するプロデューサーマンフレート・アイヒャー

彼が世界のさまざまな場所で音楽を作り出すその瞬間を、彼と共に巡っていく。『サウンズ&サイレンス』は、音楽に情熱の全てを捧げたマンフレート・アイヒャーを追ったロード・ムービーである。

レコーディング・スタジオ、コンサート会場、舞台裏や街の片隅。そこで出会う、音楽家、作曲家、さまざまな人々。そして、それぞれの物語、それぞれの街と景色、ぶつかり合いと抱擁、静寂と喧騒、失望と喜び・・・

観る者は、ジャズのみならず、クラシック、トラッド、アンビエント、ワールド・ミュージック・・・西洋と東洋の挟間、世界各地で音楽が生まれる現場を垣間見ることができ、マンフレート・アイヒャーと共に彼の周りで起こる様々な出来事を体験してく。

 

監督 ペーター・グイヤー/ノーベルト・ヴィードマーによる映画解説

 

私達がマンフレート・アイヒャーと初めて会ったのは、彼がブルーノ・ガンツとチューリッヒのラジオ局のスタジオで T.S.エリオットの『荒地』の音声を録音している時でした。「声」「音楽」そして完全なる「静寂」に包まれた部屋は、緊張に満ち、彼らはポーズ(静止)の長さについて囁くような声で話し合っては、その作業を繰り返していました。顔がこわばったり、目が輝たり、咳をしたり、ちらりと視線を送りそしてまた沈黙したり。音に集中をして作業をする二人の様子はとても情熱的で印象に残っています。

 

次にマンフレートと会ったのは、ECM の本社でした。ミュンヘンとリンダウを結ぶアウトバーンのグレーフェルフィング出口の近くにある、コンクリートの城塞です。道に迷いつつやっと到着をすると、大きな家電量販店の傍らに『Edition of Contemporary Music/ECM』の控えめなサインを見つけました。

その上の階に倉庫のようなドアがあり、その奥にECM はあります。飾り気のない 6 つの部屋があり、そこには何千枚もの CD を収めた木製の棚があるだけ。窓の外には数本の小さなモミの木がプランターに入れられて置かれ、外にはアウトバーンのループ状の出口が見えました。私達はここで ECM の創設者であり、その魂・原動力であるマンフレートと再会しました。彼は机の向こう側に座り、両手を頭にあて、古びたスピーカーから流れてくるサンプル音楽に耳を傾けていました。

映画の中でギリシャ人作曲家のエレニ・カラインドルーが、マンフレートについていくつか注目すべき発言をしています。

「マンフレートは仕事に対して常に 100 パーセントの力を注ぎます。情熱とはそういうものです。彼はその瞬間に全霊を捧げ、目の前のアーティストを全面的に支えてくれるのです」

マンフレートが時代を超越した特別な瞬間を生み出せるのは、彼の音楽への情熱、集中力、そして音楽への深い愛情です。その瞬間を映画として後世に残すことが出来たことを、私は誇らしく思っています。

キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』、ヤン・ガルバレクとヒリヤード・アンサンブルの『オフィチウム』、アルヴォ・ペルトの『タブラ・ラサ』・・・多くの人々がECM の音楽を聴いてきました。

でも、作品名やアーティストについては知っていても、その作品がどのような人々に支えられ、どのような環境で創られたのかについては、ほとんど知られていません。ECM は現代音楽にとって最も影響力のあるレーベルで、マンフレート・アイヒャーはこの分野において世界で最も重要なプロデューサーなのです。

 

とはいえ、この映画は音の間上質な音を伝えるものではありません。映画では、アーティストという存在と音の質、そして特別な環境での創作活動について焦点をあてています。

今や発表作品は 2000 タイトルを超え、商業的にも成功を収めているにもかかわらず、ECM はメインストリームの作品を生み出してはいません。“Edition of Contemporary MusicECMは音楽製造工場ではないのです。

ECM が送り出す音楽はハンス=マグヌス・エンツェンベルガーが書いた『Andere Bibliothek(もうひとつの図書館)』の音楽版のようなもので、知的な作品に特化したものばかりです。

マンフレート・アイヒャーは消費されるだけではない音楽を創りつづけています。そして、アーティストと共に、彼らの人生や信念を並外れたプロデュース力で支えています。私達が皆さんに伝えたいのは、こうした音楽を創り出している彼の世界なのです。見せかけだけのテレビのポップ・スター、演出過剰のビデオ・クリップ、大量のサウンドトラック。一

 

般大衆向け作品が氾濫する時代において、それらとは一線を画す彼がプロデュースする音楽を、映画という手法で伝えたかったのです。短いシーンをランダムにつなげて音楽をただ再現するのではなく、彼の音楽の制作過程をを辿りながら、彼の作りだす静寂(サイレンス)を表現するようにしたのです。つまり、完成した音楽をただ紹介するのではなく、制作に携わった人々の事を知り、その状況を感じるー この作品で紹介される彼の旅の中で、私は彼の音楽が生み出される瞬間を捉え、それを映像の世界で伝えています。

 ECM レコードとは


〈創設〉1969

〈創設者〉マンフレート・アイヒャー

〈創設地〉ミュンヘン

〈主要アーティスト〉キース・ジャレット、アルヴォ・ぺルト、ヤン・ガルバレク、ヴィジェイ・アイヤー、ジョン・スコフィールドほか

1969 年に稀代のカリスマ・プロデューサー=マンフレート・アイヒャーがドイツのミュンヘンに創設したヨーロッパを代表するジャズ・レーベル、ECM

(「Edition of Contemporary Music」の略)。レーベル創設時のコンセプトは 静寂の次に美しい音楽” 。他のレーベルとは一線を画す、その透明感のあるサウンドと澄んだ音質、洗練された美しいジャケット・デザインなどが世界の多くのファンを魅了してきている。

これまでリリースしてきたカタログ数は2,000 を超え、キース・ジャレット『 ザ・ケルン・コンサート 』('72 )やチック・コリア 『リターン・トゥ・フォーエヴァー』('72 ) 、パット・メセニー 『ブライト・サイズ・ライフ 』('76 ) など数多くのジャズの名盤のみならず、ワールド・ミュージック、アンビエント・ミュージックなどの世界にも貢献。1984 年にはさらにジャンルを広げ、現代音楽にスポットを当てる「ECM New Series」を開始。アルヴォ・ペルト、ギドン・クレーメル、ハインツ・ホリガーらが新作を発表しクラシック界にも進出。昨年80歳を迎えたアイヒャーは、今なお録音し続け、年間20作以上もの新譜をリリースしている。

 

マンフレート・アイヒャーとECM の歴史

ドイツのリンダウで生まれたマンフレート・アイヒャーは、ベルリンでコントラバスを学んだ。やがてビル・エヴァンス、ポール・ブレイ、マイルス・デイヴィス、そして彼のベーシストであるポール・チェンバースといったアーティストの音楽が大好きになり、ジャズに夢中になった。ドイツ・グラモフォンのプロダクション・アシスタントとして、彼はクラシック音楽の録音において最高水準を目指すとはどういうことかを学んだ。そして彼は同じ精度と集中力で即興音楽を録音し始めた。1969 年、26 歳の時にミュンヘンにてECM を創立。

ECM は「Edition of Contemporary Music」の略。透明感のあるサウンドと澄んだ音質、洗練された美しいジャケット・デザインが特徴的で、レーベルのカラーとなっている。記念すべき初の作品はマル・ウォルドロンの 『フリー・アット・ラスト』。このレーベルから数々の人気作、名作が生まれているが、別格の人気を誇ったのがキース・ジャレットとチック・コリアである。チックのフュージョン作品『リターン・トゥ・フォーエヴァー』 (72 )、キースのソロ・ピアノ作品 『ケルン・コンサート』(‘75 )は世界的なヒットを記録し、日本でも社会現象といえるほどの爆発的な人気を博した。 70年代はソロ・ピアノのブームが起こったが、キースやチックの ECM におけるソロ・ピアノ作品の人気が影響を与えている。また、パット・メセニーが 10 年近く在籍し、 『ブライト・サイズ・ライフ』、『80/81』、『ファースト・サークル』 など初期の代表作を残したのもこのレーベルである。この他、アメリカのミュージシャンでは、ジャック・ディジョネット、ゲイリー・バートン、ポール・ブレイ、デイヴ・ホランド、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、オレゴンなど、欧州のミュージシャンではヤン・ガルバレク、エバーハルト・ウェーバー、エンリコ・ラヴァ、テリエ・リビダル、ボボ・ステンソンなどが代表アーティスト。また、 1984 年にはジャンルを広げ、現代音楽にスポットを当てる「ECM New Series」を開始。アルヴォ・ペルト、ギドン・クレーメル、ハインツ・ホリガーらが新作を発表しクラシック界にも進出。昨年80歳を迎えたアイヒャーは、今なお録音し続け、年間20作以上もの新譜をリリースしている。

早い時期から、文芸出版社のモデルがレーベルのインスピレーションとなっていた。20 代半ばに ECM でデビュー・アルバムを録音したミュージシャンの多くは、それ以来このレーベルを信頼している。マンフレート・アイヒャーはかつてインタビューでこのように語った「我々の仕事は永続性という概念に基づいている」と。さらに、「レーベルのアーティスト同士の関係も発展させることが重要だ」。レコード・プロデューサーとして、彼は芸術的プロセスのパートナーであり、レコーディング会場の選択からアルバムの音楽的形成、完成品のジャケット・デザインに至るまで、すべてに関与している。ジャケット・デザインについて: ECM のレコード・ジャケットは、賞賛され、模倣され、デザイン史にその名を刻んでいる。スイスの出版社ラース・ミュラー・ヴァーラグはECM のジャケット・アートの本を2 冊も出版している。

ECM の録音は、倍音豊かで透明感のある音だとよく言われる。しかし、画一的な「ECM サウンド」は存在しない。それぞれの録音は、奏者と歌手の音に同調しており、その逆はない。「もちろん、技術には万全を期している」とマンフレート・アイヒャーは語っている。「決め手となるのは常に音楽であり、それに付随する美的アイデアだ。それが音に特徴を与える。器は常に中身に合うように形作られているのだ」ともコメントしている。

予告編

監督

ペーター・グイヤー/ノルベルト・ヴィドメール

キャスト

マンフレート・アイヒャーs、アルヴォ・ペルト、アヌアル・ブラヒム、エれに・カラインドルー、ディノ・サルーシ、他

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