国立台湾美術館所蔵 台湾の国宝「甘露水」日本上陸
「甘露水」開封完了。左から村上敬キュレーター、国立台湾美術館の陳貺怡館長、薛燕玲キュレーター、東京藝術大学の熊澤弘教授と国宝の記念撮影。(国美館提供)
「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」が、2024年9月6日に東京藝術大学にて開催。
本展は、国立台湾美術館と東京藝術大学の共同企画による国際展覧会であり、20世紀初頭の台湾と日本の芸術家による58点の作品を集結させ、100年前の東亜美術の発展を再現する。なかでも最も注目されている国宝「甘露水」は、2日東京藝術大学展示会場で正式にお披露目となった。
国立台湾美術館は、1年以上前から東京藝術大学と緊密な連携をとりながら、「甘露水」の海外展の準備を進めてきた。「国宝及び重要古物の輸送取扱規定」に基づき、今年3月に東京藝術大学は展示物貸出国の日本における裁判権または差押免除に関する保証文書を取得後、5月には国立台湾美術館が文化部文化資産局に申請手続きを行い、今年6月に文化資産局が招集した特別チームによって審査され、全会一致で「甘露水」の海外展が決定。
国宝が日本で安全に展示されるために、国立台湾美術館はまず「甘露水」の輸出梱包を最高水準の安全仕様によってオーダーメイド設計し、国宝やその他の展示作品が会場の環境に適応するのに十分な時間を与えるため、日本に到着後48時間は展示スペースに安置し、本日開梱され、良好な状態であることを確認。東京藝術大学は、会期中の国宝の安全を確保するため、展示に関わる動線、安全管理、運搬、会場の温湿度管理、作品展示台の固定などの対策を講じ、厳重な態勢で臨んでいる。
国立台湾美術館の薛燕玲キュレーターが展示チームと「甘露水」の展示位置について議論。(国美館提供)
2018年より文化部の「台湾美術史の再建」プロジェクトが推進されて以来、芸術家・黄土水の作品や関連史料が次々と発掘されている。なかでも1921年に第3回帝展に入選したことのある「甘露水」は、1958年より所在不明となっていたが、2021年に奇跡的に発見。この作品は張鴻標医師の家族によって長い間保管されてきたが、このたび国に返還し、国立台湾美術館に収蔵、2023年2月に国宝に指定された。
本展は、2023年3月に国立台湾美術館で「台湾の土、自由の水:よみがえる黄土水いのちの芸術」を開催後、国宝「甘露水」の初の海外展となる。国立台湾美術館と東京藝術大学との交流も「台湾の土、自由の水:よみがえる黄土水いのちの芸術」展から始まり、当時、東京藝術大学の熊澤弘教授、村上敬准教授、岡田靖准教授が展覧会やシンポジウムに招かれ、研究発表を行った際に台湾の人々から大きな反響を呼んだ。これらの経験や、黄土水が1915年から1922年まで東京美術学校に留学していたという事実と相まって、黄土水の作品を母校に持ち帰って展示する事が両者の間で決定された。
国美館の展示チームが「甘露水」の展示位置を決定。(国美館提供)
国立台湾美術館の陳貺怡館長は「この展覧会は、芸術家・黄土水についてもう一度研究を深めてみると同時に、20世紀初頭の台湾美術史の再建に大きく貢献し、台湾と日本の近代美術の研究にとっても深い意義があると考えます。台湾文化部、東京藝術大学、台北駐日経済文化代表処台湾文化センター、そして各界の皆様の多大なるご支援に感謝申し上げます。この会期期間において、日本のみならず世界各地から、より多くのご来場者が黄土水の芸術的価値と卓越した才能を知り、理解してくれることを期待しています」と述べた。
黄土水(1895-1930)は、台湾人として初めて東京美術学校で学んだ芸術家であり、1910年から1930年までの台湾美術界を代表する人物。黄土水が形成された時代背景を忠実に再現するため、東京藝術大学が所蔵する20世紀初頭の彫刻や絵画作品から選りすぐりを48点を集め、高い誠意を示した。これにより本展では「黄土水特設コーナー」が設けられ、国立台湾美術館より選出された黄土水作品10点と関連する文献が展示される。 黄土水の作品に、彼の恩師である高村光雲や、藤島武二、北村西望、朝倉文夫、高村光太郎、荻原守衛といった、当時日本の美術界で活躍していた芸術家たちの作品と共に展示することで、当時の東京の芸術的雰囲気が再現され、まるで20世紀初頭の日本と台湾における美術史が凝縮されたような展覧会となることを期待する。
国立台湾美術館と東京藝術大学大学美術館のチームが「甘露水」の作品状態を確認。(国美館提供)
会場:日本東京藝術大学大学美術館
主催:東京藝術大学、国立台湾美術館
キュレーター:村上敬、薛燕玲
記事の更新情報を
Twitter、Facebookでお届け!
Twitter
Facebook