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最新台湾映画|映画『火宅之犬』がクランクイン! 児童養護施設と少年犯罪をテーマに、現代の社会問題に切り込む

ニュース提供元:齊石傳播

  『火宅之犬』クランクイン式 
冬候鳥電影

南投市(台湾中部)の陳綢兒少家園(児養護施設)で1日、映画『火宅之犬(原題)』のクランクイン式が行われた。また同日、フェンディ・ファン(范少勳)、ツェン・ジンホア(曽敬驊)、ホン・ジュンハオ(洪君昊)、ディン・ニン(丁寧)ら主要キャストをはじめ、リン・フイミン(林暉閔)、リーモン・イーホワ(李夢苡樺)、チェン・ユーイエン(陳俞諺)、スー・ウェイホア(蘇韋華)、ムー・メイ(睦媄)ら若手俳優の出演が発表された。監督・脚本は、人気職業ドラマ「火神の涙」のツァイ・インジュアン(蔡銀娟)が務める。

『火宅之犬』は、家庭環境に恵まれない子どもたち、児童擁護施設のソーシャルワーカー、福祉システム、社会福祉制度などの問題について描く。タイトルの「火宅」は、法華経の「三界無安,猶如火宅」に由来し、「世界は燃えさかる家のようなもの」という意味を表す。これに、家族愛に恵まれない子どもたちを野良犬にたとえ、『火宅之犬』とした。

監督のツァイ・インジュアンが、台湾全域のソーシャルワーカー、養護施設の責任者などに取材やフィールドワークを始めたのは2017年。しかし、『火神の涙』が台湾公共テレビ(公視/PTS)の脚本育成プログラムに選ばれたため、『火宅之犬』は一旦中断し、先に『火神の涙』の脚本執筆と撮影に取り掛かることを決意。『火神の涙』の全編が放送終了した2021年、『火宅之犬』 の取材を再開したと明かした。その過程でさまざまな施設を訪れ、児童指導員や家庭支援相談員ら児童擁護施設の仕事に携わる人たちと生活を共にし、身をもって多忙な業務を体験。より多くの人々に注目してもらうため、入念な下準備を経て脚本を手がけたという。そのコンセプトは撮影前から高く評価され、スイスのロカルノ国際映画祭の「Match Me!」新鋭プロデューサー交換プログラムと優秀映画脚本賞、投資者の支援が得られる金馬奨台北金創賞などを獲得した。

ツァイ・インジュアン監督
ツァイ・インジュアン監督(冬候鳥電影)

ソーシャルワーカーの蔡仁興を演じるフェンディ・ファンは、「インジュアン監督との撮影がとても楽しみです。『火神の涙』を見てから監督のファンになったようなものですが、今回また違う分野を知り学ぶことができました。監督はさまざまな立場の人々の状況を繊細に表現されているので、本作に登場する各キャラクターもより多くの人に理解してもらえれば嬉しいです」と期待を寄せた。


フェンディ・ファン (冬候鳥電影)

二度目のツァイ作品出演となるディン・ニンは、「フェンディとは話すことがたくさんあったので、現場で一番騒がしいのは私たち二人だと思います。初共演のジンホアとはたぶん会うのも初めてなので緊張しますが、大活躍中の俳優なので、とにかく全身全霊で頑張ります」と共演者について触れた上で、「本作を通して、社会で気にかけるべき人々や物事を私たちと繋げようとする監督の思いが伝わってきます。心を揺さぶる脚本に、何度も泣いてしまいました。元々関心がある分野だったので、主任の役を演じる機会を得られて光栄です」と、本作で描かれる題材についても言及した。


ディン・ニン(冬候鳥電影)

養護施設の少年Yangを演じるツェン・ジンホアは、「昨年あるリアリティ番組で、更生施設の非行少年やソーシャルワーカーたちと触れ合う機会があり、彼らの生い立ちやその未来を理解するには、もっと努力が必要だと感じました」と明かす。「短編ドキュメンタリーを2本見て、少年のディティールや性格を探ってから、金紙工場で金紙の扱い方を学んだり、農地で農薬散布や機械の操作を習ったりしたことで、炎天下で作業する労働者の苦労を知りました。こうした経験がYang役への理解に役立ったので、Yangになれることが嬉しいです。今回は監督をはじめ、ほとんど初めてご一緒する方々なので、いろいろな化学反応を起こせたら嬉しいですね。全力で頑張ります」と意欲を見せた。


ツェン・ジンホア(冬候鳥電影)

『ハロー!?ゴースト』でツェン・ジンホアと共演した人気子役のホン・ジュンハオは、児童養護施設の子どもの一人を演じる。今回は数カ月前から演技とアクションのレッスンに打ち込んだという。そのナチュラルな演技には、将来有望との呼び声も高い。

一方、フェンディ・ファンとディン・ニンは、陳綢兒少家園でフィールドワークに参加した。フェンディ・ファンは「この環境に実際に身を置いたからこそ、それぞれの繋がりや対処する姿勢を理解できた部分があると思います。毎日たくさんのソーシャルワーカーや指導員の方々と交流し、夜通し話し込んだこともありました。彼らの忍耐力と精神力を本当に尊敬しますし、体験を共有してくれたことにとても感謝しています。今回のフィールドワークはキャストだけでなく、多くのスタッフも参加したので、みんなの結束力が高まり、目標をどこに置くのか、より明確になりました」と胸を張った。ディン・ニンは、「児童擁護施設で働く人々の仕事は本当に大変だと知る一方で、施設に行かざるを得ない子どもたちにも心が痛みます。家庭が機能不全に陥ると、国と社会は大きな代償を払わなければなりません。今回の経験で学んだことから、親の役割は想像以上に重要だと感じました」と、現実社会における課題に思いを寄せた。

『火宅之犬』は2025年、台湾で上映予定。


『火宅之犬(原題)』あらすじ

犬が殺される不可解な事件を皮切りに、「幸福児童擁護施設」の物語が幕を開ける。ソーシャルワーカーの蔡仁興(フェンディ・ファン)は、施設の子どもたちをよりよい方向へ導きたいという思いを胸に抱きつつも、現実を前に挫折を重ねていた。一方、16歳で児童養護施設を出たYang(ツェン・ジンホア)は、生き抜くため詐欺に手を染めるかの選択を迫られる。負のサイクルの要因を3つの視点から描き、なおざりにされがちな社会問題を鋭くえぐっていく。


翻訳・編集:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。

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