インタビュー|『ローリング・ガール』クァク・ミンスン監督 "パンデミックを背景にした母と娘の物語"
韓国映画『ローリング・ガール』が2024年2月2日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開。
本作は、コロナ禍で引きこもりのジュリが母に店番を任されたことをきっかけに、元気と希望を取り戻すまでの過程を描くヒューマンドラマ。この度、監督を務めたクァク・ミンスンのオフィシャルインタビューが到着した。
―― 本作を制作するに至った経緯を教えて頂けますか?また、パンデミックを思わせない作品が多く作られる中、あえてその中を生きる人々を描かれたのは、何か理由がありますか?
クァク・ミンスン監督(以下、クァク監督) 『ローリング・ガール』を作る前年に、若い社長が一人で小さなサンドイッチ屋を経営するという話をウェブドラマと映画で扱ったことがあります。その作品を終えて、食べ物を題材にした作品をもう一つ作りたいと思いました。題材は、私が子どものころから今までずっと好きなキンパが一番に思い浮かびました。それで、ソウルのどの住宅街にも一軒くらいはあるような小さなキンパ屋の話をすることにしたのです。その時、世界はパンデミックが始まったばかりの時でした。パンデミックで、多くの自営業者が大きな打撃を受け、お客さんが途絶え廃業するところも続出しました。しかし、当時世に出ていた映画やドラマはこのようなパンデミックの状況を反映しておらず、私は現実とのギャップを感じました。私は、私たちの普通の生活を扱った現実的な作品を作りたかったので、パンデミックを背景にした小さなキンパ屋を経営する母と娘の物語を作ることにしました。
『ローリング・ガール』© 2022. KWAK Min-seung. All rights reserved.
―― 主演のシム・ダルギさんは、ジュリのどこか憎めない、愛らしいキャラクターを見事に演じられていましたね!彼女を主演に抜擢された理由を教えてください。
クァク監督 ジュリ役は、もともと20代後半という設定だったので、キャスティングの段階で実際に20代後半から30代前半の俳優さんたちのオーディションを行いました。しかし、その中で納得のいく俳優さんが見つからなかったのです。そんなある日、ふと当時20代前半だったシム・ダルギさんの事を思い出しました。私はシム・ダルギさんが出演している作品の多くを観ており、俳優として良い印象を持っていました。シム・ダルギさんと最初のミーティングをすることになり、実際に会って話をしているうちに、私はこの俳優が今まで私が探していた人なんだとすぐに感じることが出来ました。幸いなことに、シム・ダルギさんもこの作品をやりたいと言ってくれました。
『ローリング・ガール』© 2022. KWAK Min-seung. All rights reserved.
―― 卵をフライパンに入れるシーンや、ご飯と調味料を混ぜるシーン、具材を巻くシーンなど、キンパ作りの過程がとても丁寧に、魅力的に描かれているのが印象的でした。「食」を描くにあたって何か工夫した点はありますか?
クァク監督 「食」を描く際に大きな苦労などはなく、料理や食材が美味しそうに見えるように、誇張はせずありのままの姿を見せようと思いました。キンパの場合、異なる色の様々な具材を一つ一つ見せて、それらがどのように調和して一つのキンパが作られるかを見せたかったです。なぜなら、映画の中でジュリが出会った、キンパ屋を訪れた様々な人々によって一つの物語が作られるのと似ていると思ったからです。ジュリがキンパを食べる時も、普通の人とは違う彼女のユニークな一面を表現しようと思いました。彼女はキンパの胴体ではなく尻尾の部分が好きで、キンパをビールと一緒に食べるのが好きです。
『ローリング・ガール』© 2022. KWAK Min-seung. All rights reserved.
―― 上記「食」の他に、演出する上で苦労したところ、工夫したところがあれば教えてください。
クァク監督 ジュリが考え事に没頭して一人で過ごす時間を描くことにこだわりました。ジュリが何もしていなくても、彼女のもどかしい気持ちや複雑な心情が画面から伝わってくるようにしたいと思いました。このようなシーンは、実はとても平凡で退屈に見えることもあり、難しい演出なのです。それを見ごたえのあるものにするためには、シム・ダルギさんの役割が非常に重要だったと思います。シム・ダルギさんは、シーンごとに徐々に変化するジュリの繊細な感情を顔で上手く表現してくれました。
―― 最後に、日本の観客の皆さんにメッセージをお願い致します!
クァク監督 日本の観客の皆さんに『ローリング・ガール』を観て頂けることになり、私とスタッフ一同、心から嬉しく思っています。日本は韓国と似たような文化を持っているので、日本の観客の皆さんが本作を観てどのような共感を得られるのか、期待と少しの不安が入り混じった気持ちです。『ローリング・ガール』が皆さんの心に響くことを願っています。是非劇場でご覧ください。ありがとうございました。
2024年2月2日(金)よりシネマート新宿ほか、全国順次公開
監督:クァク・ミンスン
出演:シム・ダルギ チョン・ウンギョン ウ・ヒョウォン
2023年/韓国/カラー/ビスタ/5.1ch/76分/原題:말아/字幕制作:TOKYO CALLING/配給:ライツキューブ
© 2022. KWAK Min-seung. All rights reserved.
公式HP:https://rolling-girl.com/
公式X:https://twitter.com/rolling0202
提供:ライツキューブ
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