性暴力事件による人間模様を写し出す『童話・世界』上映|台湾映画の“いま”
2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催の台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"」。
今年度最後となる第7回、10月21日(土)に上映されたのは、性暴力事件による人間模様を写し出す『童話・世界』。
最近台湾では政界や芸能界、スポーツ界でもセクハラ被害の告発が続き、MeToo運動が広がっている。文学や映像コンテンツが性被害事件を可視化したことも、#MeTooへとつながったと言われ、本作もそのひとつと言えるだろう。本作は、弁護士出身の唐福睿(タン・フールイ)監督がデビュー作として、現在と17年前の性暴力事件を通してさまざまな人間模様を描き出した。
世界で、特に日本でも性被害が社会問題になっているいま、この映画への関心が高いことが、参加者のアンケート回答にも強く反映されており、「最近よく耳にするようになった<グルーミング>という言葉が何度も浮かんだ。劇中で描かれるのは、わかりやすく暴力を使った性被害ではないが、思わず目を背けたくなるようなシーンが何度もある。少女たちが愛していると言いつつも、その表情が本当に苦しそうで、これは人格を深く傷つける許されない暴力だと何度も怒りを感じた」「複数の性被害を被告側、原告側から視点を変え、法律的観点から描いておりとても興味深かった。ぐいぐい引き込まれていく、とてもいい映画だった」「曖昧なラインが法律で複雑になっていく感じで、観終わった後も心の置き場所が無い感覚」「重たいテーマの作品だが俳優陣の見事な演技に引き込まれ夢中で見た。素晴らしい作品!」「今年見た映画で一番見ごたえのある作品」といった感想が寄せられた。
また、本作は現在と17年前という時間軸が交錯する映画だが、ほとんどの方が迷子になることなく作品の神髄に触れることができたのは、構成の巧みさと監督の演出力、俳優の演技力によるものだろう。
上映後のアフタートークでは、本編解説に加え、金馬奨ノミネートの紹介と日本と台湾の映画祭上映作品の最新情報が紹介。『童話・世界』の唐福睿監督からのメッセージも上映された。このアフタートークの映像は現在公開中。さらに詳しい話が聞ける監督インタビューは、アジアンパラダイスのPodcastで配信中。
台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"」も、今年度は本作が最終回となる。なかなか日本では出会うことが難しい多彩な台湾映画を鑑賞できる貴重な本イベントが、来年度も開催されることを期待している。
唐福睿(タン・フーレイ)監督のメッセージ
「『童話・世界』の脚本家で監督のタン・フーレイです。
この映画を皆さんが気に入ってくれていたらうれしいです。
この作品を作った時多くの伝えたいことがありましたが、重要なのは2つです。
一つは皆さんがに被害者や加害者への偏見を持っていなかったか考えてほしい。私はこの偏見に挑戦したいです
特に被害者に偏見があると法的プロセスにおいて被害者を大きく傷つけることがあり、
また真相に近づくのが難しくなります。これは法律的思考です、
そのために常に理性的に、偏見を取り払う必要があります。
そうすることで真相正義により近づくことができます。
もう一つは皆さんに権力と権力勢力との関係に、常に警戒心を持つ必要があると理解していただきたい。
我々は誰もが張正煦(主人公の弁護士)の立場になり得る可能性があります。
そのために常に権力を批判する態度を持つべきです。
権力関係は曖昧であり具体的な形はありません、しかも権力は通常話術により人をコントロールします。
そしてその甘い言葉に包まれた話術に支配された被害者は、我々がより理解し寄り添う必要がある対象です。
彼らは無形の巨大な価値観により脅迫され縛られ、その苦境から逃げ出すことは非常に難しいのです。」
アフタートーク映像
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=b443576b81293d1a760eafbc3e2e9b06
唐福睿(タン・フーレイ)監督のインタビューPodcast
http://asianparadise.sblo.jp/article/190621893.html
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イベント形式:会場(定員50名)とオンラインによる映画の上映とトーク
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※各回の申込みの詳細は、以下のWebサイトで告知
台湾文化センター:https://jp.taiwan.culture.tw
アジアンパラダイス:http://www.asianparadise.net
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