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坂本龍一が音楽を手掛ける『第一炉香(原題)』、香港の巨匠アン・ホイのラブコールで実現

アイリーン・チャン(張愛玲)の小説を原作とする映画『第一炉香(原題)』(英語:Love After Love)が1月14日、台湾で公開された。メガホンを取るのは、ヴェネツィア国際映画祭の栄誉金獅子賞を受賞した史上初の女性監督、アン・ホイ(許鞍華)。『ソウルメイト/七月と安生』で金馬奨を受賞したマー・スーチュン(馬思純)をはじめ、エディ・ポン(彭于晏)、チャン・チュンニン(張鈞甯)、ファン・ウェイ(范偉)、イザベラ・リョン(梁洛施)らが出演する。

また、音楽を坂本龍一、衣装デザインをワダエミ、撮影をクリストファー・ドイル が務めた。映画史に残る世紀のコラボレーションが実現した本作は、先月ティーザー映像が公開されるや否や、多くのファンから熱い期待が寄せられた。


アン・ホイは、創作の動機について上流社会の堕落した人間関係を描きたかったと語る。利益や感情が絡み合った過去の時代の欲望の群像を赤裸々に暴き、2時間の中で前世紀の香港を旅する感覚を味わってもらえるよう、背景から天候、環境まで、当時の空気感を作り上げた。

今回、初めてアン・ホイ作品の音楽を手掛けるのは、『ラストエンペラー』、『戦場のメリークリスマス』、『シェルタリング・スカイ』などでアカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など、数え切れないほどの受賞を果たしている国際的ミュージシャンの坂本龍一。坂本は、アン・ホイがずっとコラボを切望してきた憧れの存在だという。

実はアン・ホイ、1983年のカンヌで坂本本人と会った際に、自分の映画に出演してほしいとラブコール。しかし当時は、これまで客演程度の経験しかないし自分は音楽をやりたいからとやんわり断られたと明かした。

36年後、自身も殿堂入りの巨匠となったアン・ホイは、自ら東京を訪れ坂本と対面。作品を見た坂本は「ストーリーがとても気に入った」と即座に承諾し、内容に刺激されたインスピレーションをもって、映画をさらに盛り上げる独特な音楽を作り上げた。

そのドラマティックで繊細な音楽は、登場人物の運命の紆余曲折と見事に調和し、贅沢三昧の生活を演出すると同時に、ピアノと弦楽器が奏でる沈鬱な旋律との対比で各人物の虚しく孤独な内面をも表している。アン・ホイの長年の夢は、彼女の想像を超える完成度で実現した。

一方、情欲をめぐる関係の要となるクズ男・喬琪喬役を演じるエディは、自身の役について、裕福な環境で育ったハーフで、女性受けがよく気が多い道楽息子、ヒロイン葛薇龍との関係は偽りだと皆が知っていると説明。

劇中以外ではこの役に共感するのは難しかったとしながらも、「自分が演じたこの役は、誰よりこの恋愛ゲームに没頭している」と話した。SNSでは「この役はエディ以外にできない」など、多くの「彭太太(エディのファン)」が高評価を示した。




翻訳・編集:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。2017年4月より、ラジオ番組「Asian Breeze」では台湾の現地情報を発信するコーナーを担当中。

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