『FUNAN フナン』ドゥニ・ドー監督インタビュー
第42回アヌシー国際アニメーション映画祭で見事グランプリを獲得した『FUNAN フナン』(配給:ファインフィルムズ)が12月25日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル池袋ほかにて公開。この度、監督インタビューと新場面写真が解禁となった。
ポル・ポト率いるクメール・ルージュに支配された1975年以降のカンボジアを舞台に、息子と離れ離れになってしまった母親チョウの激動の日々を描く本作。監督、脚本は本作が長編初監督作品となるドゥニ・ドー。名門アニメーションスクール、ゴブラン・レコール・デュ・リマージュを卒業後、フランス生まれでカンボジアにルーツを持つ彼が「どうしても作品にしたいと思っていた」と語る史実と自身の母親の体験を基にしたアニメーションは、アヌシーでのグランプリを始めエミール賞での脚本賞とサウンドデザイン賞のW受賞など、世界中で高い評価を獲得した。本作について、詳しく語ってもらった。
【ドゥニ・ドー監督インタビュー】
Q:お母様の体験を映画にした理由を教えてください。
A:『FUNAN フナン』は家族の物語です。そして、私の母親の物語です。母はクメール・ルージュ統治下で犠牲を払い、心を砕かれながらも生き延びたのですが、その体験を映画にしました。その後フランスで生まれた私にとって、白人ではない自分のアイデンティティは何か?と考えることが非常に多く、この映画はどうしても作る必要があったと思っています。
Q:アニメーションを選んだ理由は
A:私がいちばん情熱を注げる表現方法だからです。そして、女優が母を演じるよりも、アニメーションを通した方が、普遍的に描くことができると思いました。ヒロインはカンボジア人ですが、ひとりの女性であり、母親でもある。現実世界に普通に存在するような人物を多角的に見せ、観客を物語に引き込む手段としては、まさにアニメーションが理想的です。主要キャストの声優にベレニス・ベジョ、ルイ・ガレルという才能ある俳優たちが参加してくれたのは本当に幸運でした。
Q:舞台は1975年代ポル・ポト政権下のカンボジアです。デリケートな題材ですが、製作にあたってはどのようなことを心がけていましたか。
A:私は当時のことを徹底的にリサーチしてこの映画を作りましたが、ポル・ポト政権下を扱う映画作品に疑問や異論がつきまとうことは承知の上でした。ただし、“トラウマになるかもしれない”という否定的な考え方は避けました。製作を始めて気がかりだったのは、誰かの実体験に基づいて描かなければ嘘っぽくなるという点でした。そこで母の証言を受け、あらためてキャラクターを造形することにしたのです。人物を深く掘り下げることによって、私は当事者たちの身に起こったことを追体験しました。
Q:カンボジアの雄大な自然の風景が本当に見事です。
A:リサーチの一環として、カンボジアを訪れ、写真や証言などを出来る限り集めました。その風景が再現されていると思います。自然の前では人間は無力で、どんなに厳しいことがあっても自然は生き残り続ける。その対比を表す一面はあったと思います。カンボジアは女性に似ていると、私は思います。ありのままの姿でも艶やかで、存在自体が美しい。本作はそんなカンボジアと、すべてを失いながらも生きることへの決意と信念に支えられ、踏ん張った人々に捧げる映画です。
『FUNAN フナン』
12月25日(金)YEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル池袋他にてロードショー
今はただ進むしかない、わずかな希望を頼りに―。
【ストーリー】
カンボジア、1975年4月。武装組織クメール・ルージュによるプノンペン制圧のニュースを境に、多くの住民が強制労働のため農村に送られる。一家で農村へ移動する道中、息子ソヴァンと離れ離れになってしまった母親のチョウ。農村での革命組織(オンカー)の監視による苛酷な労働や理不尽な扱いは、彼女と夫クンを、そして共に生活する家族を一人、また一人と追い詰めていく。しかし、チョウは決して諦めない。生き延びて、最愛の息子を取り戻すため―。
監督:ドゥニ・ドー アートディレクター:ミッシェル・クルーザ 『怪盗グルーの月泥棒 3D』
声の出演:べレニス・ベジョ 『アーティスト』、ルイ・ガレル 『グッバイ、ゴダール!』
2018/フランス、ベルギー、ルクセンブルク、カンボジア/カラー/フランス語/87分 原題:FUNAN 映倫:G
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 東京、ベルギー大使館、ルクセンブルク大公国大使館、在日本カンボジア王国大使館
配給:ファインフィルムズ
Les Films d'Ici - Bac Cinéma - Lunanime - ithinkasia - WebSpider Productions - Epuar - Gaoshan - Amopix - Cinefeel 4 - Special Touch Studios © 2018
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