連載
【コラム】"F4"が巻き起こしたこと / 第3回「ヴィック・チョウ」 山口淳子(台湾コーディネーター、ライター)
2004年に「流星花園~花より男子~」のDVD-BOXが日本で発売になり、今年で15年が経ちました。
今でも「流星花園」は根強い人気を誇っており、F4ファンからは熱い声が寄せられます。
ここまで人を夢中にさせる「流星花園」、そしてF4って、いったいどんなムーブメントだったんだろう?
当時をよく知る華流業界の4名に、F4の思い出を振り返ってもらいました。
第1回:F4
第2回:ジェリー・イェン
第3回:ヴィック・チョウ
第4回:ヴァネス・ウー
第5回:ケン・チュウ
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ヴィックはまさにF4の花沢類そのものだった。物憂げな表情、やさしい微笑み、原作漫画のイメージにピッタリ。
デビュー直後で芸能界に慣れていなかったことや、シャイで人見知りする性格だったことも手伝って、アンニュイな王子様キャラのイメージが強かったヴィック。
白いセーターに赤いバラの花束を抱えて微笑む姿に、少女からだいぶ年上のお姉様までもがキュンキュンしていた。
F4の中では末っ子の弟としてメンバーから可愛がられる存在。
当時、私が見かけたオフの姿で印象的だったのが、目をクリクリさせながらケンに向かってお菓子の箱をパカパカと開け閉めして見せている様子だ。なぜそんなことをしていたのかは謎だが、ヴィックの嬉しそうな表情に「か、可愛い...」と思ったのを覚えている。
オタクでゲーム好き。親友だったシュウ・ジエカイとは一時期同居していたこともあったが、同じ家に住みながら、それぞれの部屋に閉じこもってチャットで会話していたというエピソードもあった。
そして香港四天王の一人、アンディ・ラウのファンで、ファンミーティングではアンディの歌を熱唱することもしばしば。
知れば知るほどいろいろな姿を見せてくれるヴィックはとても興味深く、私にとってF4の中で一番の『推しメン』。
あの頃、プライベートでは茶色のショルダーバッグをいつも持ち歩いているところや、ちょっと特徴のある「ぐふぐふ」という笑い方も、なんだかオタクっぽさが感じられて大好きだった。
カッコいいだけじゃない、ツッコミどころ満載のヴィック、そしてF4。そこがたまらないのだ。ファンの方はみな、完璧そうに見えて実はいろいろとツッコミどころ満載の彼らに魅力を感じていたはずだ。
友達に付き添って行ったオーディションでスカウトという、スターにありがちなエピソードでデビューし、あっという間にスーパーアイドルとなったヴィックだが、その後俳優としての才能をどんどん開花させていった。
『戦神?MARS?』でのヴィックの演技は注目を集め、作品は金鐘奨で人気ドラマ賞を受賞。彼の俳優としての実力を認められるようになった作品だ。
ちなみにこのドラマは仙台でも撮影が行われた。数百人の日本人ファンがエキストラとして参加しており、これがヴィックの公式初来日となった。日本のファンにとっても思い出深い作品である。
そして『ブラック&ホワイト』はツァイ・ユエシュン監督がドラマ構想段階からヴィックが痞子を演じることを想定して作った作品。
ヴィックはその演技力が高く評価され、金鐘奨主演男優賞にノミネート。だがこの時、ヴィックとW主演を務めた新人のマーク・チャオも主演男優賞にノミネートされた。
同じ作品に出演したヴィックとマークのノミネートは話題となったが、結果はマークが主演男優賞を受賞。金鐘奨プレスセンターで取材をしていた私はこの結果に驚いた。ヴィックが獲るだろう、獲ってほしいと思っていたから。
授賞式後の『ブラック&ホワイト』チームの打ち上げにもお邪魔したが、そこにヴィックの姿はなかった。
授賞式では飄々とした様子でマークに拍手を送っていたヴィック。のちに台湾メディアのインタビューでは「賞を獲れるかどうかは気にしない。ノミネートされたことに意味がある。演技を評価されたということだから」と話しているが、あの時のヴィックの本心はどこにあったのか。それを思うと今でも切なくなってしまう...。
だがその4年後、日本軍の軍医役を演じた『回家』でついに主演男優賞を獲得する。
インタビューでは役柄について「この作品の役がこれまで演じてきた中で一番重苦しい役で、肉体的、精神的にとても苦労した」と話してくれている。
クランクアップして間もない頃に来日した際のインタビューだったのだが、「僕の気持ちはまだストーリーの中に残っていて、役から抜け切れないでいる」と話していたのが印象的だった。
彼は以前から役に入り込むタイプだったなと思う。
『ブラック&ホワイト』の撮影時に、高雄の現場に取材に行かせていただいたことがあるが、カットがかかったあともヴィックは誰かと話をするでもなく、そのままガードレールにしばらく一人で座っていたのだ。
ヴィックからいつもと違うオーラが放たれていて、近寄りがたい雰囲気があった。その日の撮影後、さあインタビューという時になって、ニッコリ笑ってくれた彼に「あ、いつものヴィックだ」とホッとしたのを覚えている。
インタビューのたびに「いろいろなキャラクターを演じてみたい」と話していた通り、その後もさまざまな作品に出続けているヴィック。
最近では、立て続けに時代劇にも挑戦し、どんどん新しい姿を見せてくれているのだから、ファンは飽きることがないだろう。
でも、できればたまには日本にも来てほしいと思う。そして、俳優としての姿もうれしいけれど、またF4の姿も見たいなぁと思う。
2007年、F4の3枚目のアルバムをリリースした時の囲み取材の時だったか、F4のこれからの活動についての話題になった時、ヴィックは「4人一緒にずっと活動していくことは難しい。でも何年か何十年か経った時に、僕たちもファンも、自分の子供を抱いて集まれる機会があったらいい」と話していた。
2013年の中国での再結成から6年。そろそろまた集まってほしいと願っている。
TEXT:山口淳子(やまぐち じゅんこ)
台湾コーディネーター、ライター。香港・台湾での語学留学経験あり。もともと香港好きだったが、F4を知り台湾に興味を持つ。台湾コーディネーターとして番組の企画・制作や台湾アーティストの日本活動などの仕事に携わっている。また、台湾・韓国を中心としたアジアエンターテインメントの記事も執筆している。
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c2004 Comic Ritz Productions Co., Ltd.原作/「MARS」(講談社「別冊フレンド」誌掲載作品)c1996 Fuyumi Soryo / KODANSHA All Rights Reserved.
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