【インタビュー】「悪との距離」ルー・シーユエン脚本家　後編 "希望がなければどうやって進むのでしょう"

2020.06.1613:00

圧巻の金鐘奨6部門受賞、史上最多14ノミネート！台湾ドラマの歴史を変えた、いま見るべき傑作ヒューマンドラマ「悪との距離」。本作の脚本を担当したルー・シーユエン作家に本作について話を訊いた。

―　この物語の結末には、未来への希望が感じられます。正解のないテーマなのでどう終わらせるかは様々な可能性があったと思いますが、この結末にしたのはどうしてでしょうか？

ルー・シーユエン作家　実は希望があるだけで、たくさんの事件（例えばマスコミの状況や精神障害の苦境）はまだまだ続いています。傷が治っても傷痕は残りますが、それでも頑張って進んでいくしかありません。実際に傷ついた家族の方々はまだ生活していますので、やっぱり希望がなければいけないと思います。希望がなければどうやって進むのでしょう。

―　脚本を執筆している段階でイメージしていた俳優はいますか？

ルー・シーユエン作家　振り返ってみると、ウー・カンレンとゾン・ペイツーですかね。ウー・カンレンをイメージしたのは、もともと彼と親しいからです。ゾン・ペイツーは、以前ほかのドラマで一緒に働いたことがあり、彼女は私がイメージした應思悅にふさわしいと思ったので。キャラクターで違いを作りたかったのは、三人の女性主人公（李大芝、應思悅、宋喬安）は、それぞれ20代、30代、40代の女性像と、彼女たちが背負っているものを表現しています。キャストにこの差を作って頂きたかったです。

―　本作に出演した俳優で印象に残っている方はいらっしゃいますか？その理由も教えてください。

ルー・シーユエン作家　シエ・チョンシュアン（李大芝の母親役）！　簡単なセリフでも、彼女が言ったらとても力強くなり、彼女が出たらいつも泣きそうになります！　あとウー・カンレンの、第五話の酔っ払いながらのスピーチ。なんと見ても泣きます！

―　演出を担当されたリン・ジュンヤン（林君陽）さんとのお仕事はいかがでしたか？

ルー・シーユエン作家　リン・ジュンヤン監督はとても理性で優しくて、そして撮影もできる人。この専門分野出身だから分かりませんが、チームの雰囲気を重視し様々な意見を尊重している方です。台湾ではとても珍しいタイプの監督です。

―　実際に完成した作品をみて、印象に残ったシーンは？

ルー・シーユエン作家　映像的には李大芝の両親が土下座をしながら記者に囲まれる様子を、カメラが上から撮ったシーン！　初めて見たときに鳥肌が立ちました。

―　脚本家として、本作の名台詞を選ぶなら？

ルー・シーユエン作家　「私たちみんないい人なのに、なぜこうなったの？神様は一体何を学んでほしいの？」

―　社会現象になるほど大きな反響を呼んだ「悪との距離」ですが、どのようなところが人々の心を掴んだと思いますか？

ルー・シーユエン作家　まさか台湾がこんなにシリアスで敏感なジャンルをドラマ化にするなんて！　口コミから見ると「真摯でリアルで視聴者の共感を呼んだ」というところですが、個人的には素晴らしい制作チームと魅力的なキャスト陣がいることだと思います。

―　第２シーズンが決定されたそうですが、どういった内容になるか可能な範囲で構いませんので教えていただけますか？

ルー・シーユエン作家　今はまだフィールドワークの途中なので、何とも言えないですね。自分がいつ諦めるか、方向性を変えるかもしれないので。（原則がない脚本家だね！）

―　台湾ドラマにとってエポックメイキングな作品になったと言われる「悪との距離」ですが、ルー・シーユエンさんから見て、台湾ドラマは今後どのようようになっていくと思いますか？

ルー・シーユエン作家　ちょっと怖い称号だと思いました！　映像業界の資金は常に変化しています。過去と比べると資金はどんどん充実していきます（が、製作費に対する要求もどんどん高くなる）が、やはりコンテンツの本質に戻ったほうがいいと思いますし、お金に誘拐されず（難しい！）、台湾ならではのジャンルを見つけて、諦め''させられ''ないで、影響''され''ないで。そうしたほうが長く続けれると思います！

―　これから「悪との距離」を見る日本の視聴者へメッセージをお願いします。

ルー・シーユエン作家　脚本を書いていた時に、日本で出版した本やドラマを拝見させて頂きました。日本の出版業界、映像業界の多元性に感謝で、遠い台湾にいる私もとても勉強になり感動しました。「悪との距離」を気に入って頂ければ幸いです！

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