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歴史をより深く!
「師任堂」がより楽しめる歴史豆知識

「師任堂(サイムダン)、色の日記」を見るうえで、この歴史をしっているともう1歩深くドラマを楽しむことができる。そんな豆知識をご紹介します。

高麗紙

劇中で師任堂たちが取り組む高麗紙作り。
高麗紙はどのように生まれたのでしょうか。

朝鮮半島に製紙の技術が伝来したのは3世紀半ばごろといわれています。仏教をいち早く受け入れた高句麗では、仏教経典を制作するために紙の需要も伸び、僧侶自らが製紙を行う寺院もあったといいます。

そして、新羅時代に入り、慶尚南道宜寧郡のデドン寺のある住職が、偶然に楮(こうぞ)の木の繊維に着目し、製紙に適しているのではないかと新たに研究を重ねたのが、今に伝わる韓国伝統の韓紙の始まりと伝えられています。

仏教を国教とした高麗時代には、紙の需要がさらに伸び、それに伴い技術も発展しました。
楮で作られた紙は、丈夫で耐久性に優れており、高麗で作られた紙は中国の学者たちに重宝され「高麗紙」と呼ばれるようになりました。
高麗紙はそれまでの紙よりも目が細かく詰まっており、ツヤがあるのが特徴ですが、これは最後にこん棒で数百回叩いて油紙のようなツヤを出して仕上げたからだそうです。
毛羽立ちも少ないため、文字がにじみにくく、重要な公文書などに用いられました。

この頃には世界初の金属活字印刷による『直指身体要節』や、木版印刷の『高麗八萬大蔵経』などの仏教経典や、『三国遺事』など歴史書も刊行されています。

高麗末期には初めての紙幣となる楮貨(チョファ)が流通し、朝鮮時代になり第3代王の太宗は貨幣制度の大改革を行います。楮貨の導入を宣言した太宗は、造紙所を設置し、紙を作らせ紙幣を印刷しました。

また、仏教を排し儒教を国教と定めた朝鮮では、儒教の教えを庶民に広める『三綱行実図』など書の刊行も積極的に進められ、紙の生産はますます盛んになります。やがて高価ではあるものの、庶民でも書籍や紙自体が手に入るようになっていきます。


文・キネマ旬報社(担当:アジアチーム 岡崎暢子)

アジアチームでは『韓国テレビドラマコレクション2017』『韓国ドラマで学ぶ韓国の歴史2017年版』など、韓国関連出版物のほか、『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』など華流関連出版物も刊行。最新刊『韓国テレビドラマコレクションプラス』では、韓国ドラマをゆっくりじっくり楽しみたい大人のためのムックとして、「師任堂(サイムダン)、色の日記」などドラマ紹介を中心にバラエティや料理レシピ、コラムなど幅広く紹介。全国書店で発売中


【参考文献】 
『千年持ちこたえる私たちの紙 韓紙』ハンソル教育
『韓紙匠 重要無形文化財第117号』民俗院
『ビジュアル版 朝鮮王朝の歴史』キネマ旬報社 ほか

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