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「永遠の桃花」「晩媚と影」 花が意味すること:前編|中国時代劇トリビア#26

華やかな中国歴史ドラマの世界では、美しい花々が登場し、場面に彩を添えるだけでなく物語も盛り上げていきます。今回はそんな中国歴史ドラマに登場する印象的な花々についてご紹介していきます。

まずは人気絶好調!のファンタジーラブ史劇「永遠の桃花~三生三世~」のタイトルにもなっている"桃花"からスタート。

「永遠の桃花」場面写真

「永遠の桃花~三生三世~」より

桃は古くは小説「西遊記」にも登場し、中国時代劇ではおなじみの花。桃は、邪気を払って不老不死を授けるラッキーアイテムで、その花の美しさから女性の顔立ち、美人の比喩にも用いられています。

中国の地理書『山海経』には、邪気を防ぐまじないとして、大みそかの夕べに桃の木で作った人型=桃人(とうじん)を門前に立てるというならわしもあったということが紹介されており、桃が昔から魔除けのシンボルとして使われてきたことが分かります。また、魏晋南北朝時代、東晋末から南朝宋の文学者・陶淵明が書いた『桃花源記』には、桃の花の咲く林の奥にある洞穴の中に、外界とはまったく隔離された平和な地、"桃源郷"が登場し、桃や桃の花が幻想的な世界へいざなうシンボルとして描かれています。

桃の花が古くからファンタジー的要素で人を惹きつける不思議な魅力を持っていたことが分かりますね。

「永遠の桃花」場面写真2

「永遠の桃花~三生三世~」より

続いては、「永遠の桃花~三生三世~」そして「皇帝と私の秘密~櫃中美人~」「晩媚と影~紅きロマンス~」に登場する"蓮"。

蓮は古代インドの神話に登場したり、仏教などの宗教に取り入れられたりしてきました。泥の中から美しい花を咲かせることから、厳粛で清らかなイメージや、神仏とのつながりを連想させますが、中国の蓮の花言葉には、男女の愛情や妖艶な寓話を秘めたものも多く、恋の花・愛の花として登場するようです。

蓮の花の精が美女の姿になって人間と恋をする、というエピソードは、中国の物語や小説にも登場します。なるほど、「皇帝と私の秘密~櫃中美人~」や「永遠の桃花~三生三世~」で、ぶかっこうなレンコンが美女や身体の一部に変身できちゃうのは、蓮の花にこうした要素があったからなのですね!

「皇帝と私の秘密」場面写真

「皇帝と私の秘密~櫃中美人~」より

そして「晩媚と影~紅きロマンス~」では、女刺客たちがターゲットを仕留めた証として、傘に精気を吸い込ませて描かせるのも蓮の花......。妖艶でエロティックな物語の世界観を、真っ赤な血に染まった美しい金色の蓮の花たちが盛り立てていました。

清廉潔白なイメージの蓮が、なぜ恋や愛情に結びつくのでしょうか? 次回は、その理由について詳しく探っていきたいと思います。どうぞお楽しみに!

「晩媚と影」場面写真

「晩媚と影~紅きロマンス~」より


<後編につづきます>

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。

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<参考文献>
【参考文献】
集英社新書 飯倉照平著 「中国の花物語」
草思社 中村公一著 「中国の愛の花言葉」
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