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 桃太郎から始まる「別格」の定義



むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが。



と、日本が誇る正義の太郎といえば「桃太郎」がダントツの知名度だろう。たぶん。

そこに「金太郎」「浦島太郎」がAクラス争いといったところだろうか。



え、ウルトラマンタロウ?

そのタロウは「地球を守るヒーロー」、日本国内だけの正義の太郎ではないから別格だ。

そもそも彼は宇宙人である。少年の夢を壊してはいけないのでもう一度言う。

彼は宇宙人であり、宇宙のヒーローである。背中にチャックなどは見当たらない。



それを考えると桃太郎も桃の中から呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンの謎の生物、

浦島太郎にいたっては海の中で何年も悠長に生きていける人間。

亀を助けたところまでは正義だが、そのあとは美女やタイやヒラメと遊び呆けて

約束すら守らず、しまいにはお爺さん&鶴になってどっか行ってしまう。

いま思うとなかなかのファンタジスタである。



そういう意味では人間としてまともなのは「金太郎」、キミだけだ。

さすが「金」を名乗るだけはある。平安時代の武士、坂田金時の幼名だとも言われる。

その後サラリーマンになったとかならないとか。



重要な太郎を忘れるところだった。

一度も風呂に入ったことがなかったおじいさんとおばあさんの大量の垢から

完成されたという、太郎の中でもおそらく国内最大級の異彩を放つ、その名も「あか太郎」。

敵のショッカーに作られたという仮面ライダーが赤子に思えるほどの出生の悲劇。

だいたいその老夫婦からして色々とつっこみたい。

このいわゆる「力太郎」、よくもまあこんな設定の童話を作ったものだ。



そういう検証するとやっぱり金太郎、キミがナンバーワンだ。



と、色々と小さな頃から身近にあった物語をいま改めて思い返しているだけで

当時とはまた違った解釈ができたりして楽しめる。





しかし、いまだに解釈不可能なものがある。



「クラムボンは笑ったよ」

「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」



宮沢賢治の「やまなし」に出てくる、カニの兄弟の会話の一節だ。



クラムボンもわからないしかぷかぷもわからない。作中でなんの説明もない。

そして、そのクラムボンが何者なのかわからないままにこう続く。



「クラムボンは死んだよ」

「クラムボンは殺されたよ」



奇妙にわらっていたはずのその謎の生物(?)は何者かに殺されるのだ。

こんなに衝撃だったことはない。



「それならなぜ殺されたの」

「わからない」



「それならなぜクラムボンは笑ったの」

「しらない」



こちらも知りたいところをあっさりぶった切る。もう何から何まで衝撃だった。



例えば「およげ!たいやきくん」も最後に食べられるという衝撃のエンディングだが、

その結末はある程度は受け入れられた。たいやきは食べ物だと認識していたから。

しかし「やまなし」は全体的にふわっとした平和な情景の中には謎の怖さというか、

常にどこか不思議な感覚が消えなかった。



ジェイソン等のあからさまな恐怖の敵よりも、スピルバーグの映画「激突」のように

相手が結局最後まで何者なのか見えなかったほうがある意味で怖い。そんな感じだ。



いったいなんなのだ??クラムボン。

国語の授業以来、こんなに長く生きてきて今でも「正体不明のまま」ってあるのか??

もちろん今でも意味を知らない単語は山ほどある。でも調べればほとんどわかるだろう。



クラムボンはもう一生無理だ。なんせ作者が一切のコメントも残していない。

「かぷかぷ笑う」ということもどんな笑い方なのかおそらく一生説明できない。



他の宮沢賢治作品では「注文の多い料理店」もトリッキーで大好きだし、

「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」「雨ニモマケズ」などといった有名作品も多いが、

このパンキッシュな感じの「やまなし」はどこか別格だと今でもずっと思っている。



そんなこんなで別格というならば、

我々の取り扱っている韓国TVドラマの中での別格はやっぱり「宮」だろう。

他にも数々の良質なドラマを手掛けているという自負は持っているが、

発売から何年たっても「宮」があったからこそ当社の韓国コンテンツ全体の

ステータスが格段にあがったと今でもずっと思っている。



10年ほど前、宣伝している当時は「クン」だなんて誰も読んではくれなかった。

「ミヤと書いてクンと読みます。よろしくお願いします。」

何度も何度もそう説明して回ったことが懐かしい。



それが今では変換だけで「宮」と出てくる。竜宮城の「宮」だ。聞いてるか浦島。

この漢字を見るとまずは「クン」だ。

韓国ドラマファンの方は言うまでもなく、この業界の人ならもうほとんど読めるだろう。

もはや宮沢賢治でさえ「クンザワ」に見える。それはない。でもそれほどのテンションだ。



作品によって大なり小なり評価が分かれるのは何にしても当然の事だとは思っているが、

今まで「宮は嫌い」「宮はイマイチ」という声を一度も聞いたことがない。少なくとも僕は。



例えば、個人的にいえば「ファンタスティック・カップル」はもの凄く好きだが

決して万人受けしたわけではない。でも「宮」にはそれが一切無い。そこが別格たる所以だ。

(評価が分かれるから良い悪いの話ではないのであしからず)



今さらここで「宮」の内容を紹介する必要はないが、珠玉のトライアングルラブストーリー、

この偉大なる別格作品に最大級の感謝を込めながら今回は締めくくりたい。







そういえば「太郎こおろぎ」ってあったな。





<筆者プロフィール>

名前:UMS(エスピーオー男性社員)

出身地:福岡県北九州市

現在地:文京区











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